書評ブログ

『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』

マーケティング領域で活動している話題のデータサイエンティストが、「人間の50%はクズである!」として、大ヒット&大ブームの「悪魔の法則」について解き明かした本があります。

 

 

本日紹介するのは、龍谷大学法学部を卒業、多摩大学大学院統計学・データサイエンスを学び直し、デジタルマーティングや消費者インサイトの分析業務を中心に行うほか、各種媒体に記事を執筆、SNSで情報発信するなどの活動をしているデータサイエンティスト松本健太郎さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)

 

 

この本は、人間の基本煩悩である「貪(欲望)」「瞋(怒り)」「痴(愚かさ)」「慢(怠惰)」「疑(不信)」「悪見(偏見)」の6つに注目し、世の中の「ヒット」と「ブーム」がどのように生まれているのかを分析している書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.ヒット商品は必ず “ 悪 ” の顔がある

 

2.人は「強欲」な存在である

 

3.「怒り」が人を動かす

 

4.人は「怠惰」な動物である

 

 

 

5.言葉は人を騙す

 

6.嘘は真実より美しい

 

7.人は「矛盾」に満ちている

 

8.おわりに

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「ヘルシーなサラダが食べたい」「ヘルシーじゃないからマクドナルドには行きません」というお客様の声に応えて開発・販売した「サラダマック」がなぜ売れなかったのかという事例を解説しています。

 

 

 

それは、少しでも自分を良く見せたいという願望が働いて、騙すつもりのない「キレイな嘘」をつく場合が人間にはある、ということを洞察できなかったからだ、と著者は言います。

 

 

 

人間は合理的ではなく、意思決定には歪み(バイアス)が生じます。そうした人間の合理的な意思決定の限界に着目しているのが行動経済学で、「合理性」では人間の50%しか見えない、というのが著者の松本さんの主張です。

 

 

 

したがって、データは非常に胡散臭い存在であり、盲目的に信じると痛い目に遭う、と著者は言います。とくに人間を相手にデータを計測するなら、対象物を深く観察し、本質を見抜き、データから欠落した内容を推論によって埋め、仮説を立てて検証し、正しい結論を導く必要があるのです。それが「洞察力」だと本書では説明しています。

 

 

 

マクドナルドの事例で言えば、「不健康かもしれないけど、脂っこくてジューシーな高カロリーのハンバーガーをガブッと喰らいつきたい」のがお客様の本心だったのです。

 

 

 

「サラダマック」の販売終了の後に開発・販売した、従来の2倍以上のサイズの「クォーターパウンダー」が大ヒットしました。

 

 

 

続いて、この本の前半では、人間の「強欲」「怒り」「怠惰」という煩悩を刺激する「悪魔のささやき」による商品・サービスのマーケティング事例やそのメカニズムを解説しています。主なポイントは以下の通り。

 

 

◆「食べ放題」が人気なのは、「気分一致効果」(幸せ感情)と損失回避(サンクコスト)の行動心理

 

◆ ペットボトル入りコーヒーなど大ヒット商品は「不満」から生まれる

 

◆ サントリーの「天然水」は「機能価値」に加え、清冽な水と空気を感じる「情緒価値」で買われる

 

◆「意識高い系」に支持される NewsPicks は「承認欲求」を満たす仕掛けがポイント

 

 

 

◆ グレタさんの「正論」に怒る大人が多いのは、「ナイーブ・シニシズム」と「心理的リアクタンス」のため

 

◆ SNS上の炎上は「結果バイアス」や「確証バイアス」で起きる(悪魔のレッテル貼り)

 

◆「女性差別」に飛びつく「無意識バイアス」

 

◆ 大人は現状維持を好む「現状維持バイアス」

 

 

 

◆ 良いと悪い、好きと嫌いなどの「バランス理論」

 

◆「生存者バイアス」も知っておくべき

 

◆「怠惰」はイノベーションの母

 

◆ 人間のクズ(ダークサイド)に人は親近感を抱く

 

 

 

さらに本書の後半では、人間の「不信」「偏見」「矛盾」について、次のような事例やポイントを紹介しています。

 

 

◆ 人は「身元の分かる犠牲者効果」として、ストーリーで動く

 

◆ キレイごとではモノは売れない

 

◆ 人は極論に飛びつく「誇張された予想バイアス」がある

 

◆「新しい技術」はとにかく叩かれる

 

 

 

◆ ギャンブラーほど確率を知らない(ギャンブラーの誤謬)

 

◆ 人間は確率に弱い生き物(確率の無視)

 

◆ 数字は都合よく作られる、人は「多数派」になびく

 

◆「信じたいもの」しか人の目には映らない、批判によって「信仰心」が強くなる

 

 

 

◆「占い」はバイアスを利用している(自己充足的予言、バーナム効果)

 

◆ 単純接触効果、内集団バイアス、同調バイアスでヒットする

 

◆ データという権威づけ

 

◆「金と命」はいつも天秤にかけられる

 

 

 

この本の最後で著者は、各宗教では「悪」を定義し、戒めていますが、そうした「戒律」が必要とされているのは、そうしないと人間が「悪」になびいてしまうという何よりの証拠だ、と述べています。

 

 

 

だからこそ、「人の半分は悪」であるので、人は「悪を刺激するようなもの」、つまり「悪魔」に熱狂するのです。

 

 

 

あなたも本書を読んで、データサイエンティストが解き明かした「愛と欲望の行動経済学」を学び、悪魔に熱狂する人間の心理に訴えるヒット商品を開発してみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2463日目】