書評ブログ

辻村裕治『マジカル・ミステリー・ハワイ – オアフ島路線バス乗り放題の旅』(論創社)

辻村裕治氏は、1949年愛知県生まれで、早稲田大学を卒業したサラリーマン。42歳で初めてハワイを訪れて以来、重度のハワイ病にかかった。

 

辻村氏は、 ザ・バスでオアフ島めぐりをして、コンドミニアムで夕日を見ながらバド缶を開けるのが何よりの楽しみ、という中年おじさんだ。

 

これまで、おじさんハワイひとり旅をした体験を綴った以下の書籍を二冊、出版しており、いずれも好評だ。真似してハワイひとり旅を敢行する中年おじさんが続出したという声もある。

 

実は私も、転職が決まって次の会社の勤務が始まる前の休みを利用して、3回ほど、おじさんハワイひとり旅を経験しているので、著者の盛り上がる気持ちは手に取るように分かる。

 

1.『おじさんハワイ一人旅ーオアフ島4泊6日のバス・ツアー』 (光文社文庫、1999年)
2.『おじさんハワイ気まま旅ーハワイ島4泊6日ホロホロ歩き』 (知恵の森文庫、2001年)

 

辻村氏は、2005年に病いのため56歳の若さで亡くなられたが、本書の原稿とカラーのオアフ島・バス停のイラストがほぼ完成して残されていた。

 

本書の最後に、夫人の由美さんが、著者のハワイに対する熱い想いを記していて胸を打たれる。出版社が亡き著者の遺志に賛同して出版となった。

 

「アロハクラブ」というハワイ好き仲間の情報誌発行組織の同じ会員ということで、突然の訃報に接した時は、私も身内を失ったように無念だった。

 

本書は、ザ・バスで回るオアフ島めぐりの旅行記だが、著者が描いたバス停のイラストがカラーで随所に掲載されていて、構成は以下の通りだ。

 

1.ホノルル国際空港からワイキキへ
2.オアフ島南東部
3.ワイキキからアロハ・タワーへ
4.カイルア、サークル・アイランド
5.ハワイ大学とホノルル歴史探訪
6.出版に寄せて

 

オアフ島のザ・バスは、路線が数多く運航しており、何処まで乗っても定額で、ロコの足となっている。時間はかかるが、のんびりとオアフ島をめぐるには、独特のローカルの雰囲気も味わえて最高だ。

 

私も、ハワイへ行くとザ・バスのファンで移動の足として愛用している。本書の記述とイラストにより、訪れたオアフ島のスポットワイキキの街並みが目に浮かぶように蘇ってくる。

 

ハワイの開放的で素敵な雰囲気と、著者の熱い想いが伝わってくる素晴らしい書になっている。辻村さんのご冥福を心からお祈りするとともに、本書をハワイが大好きな人々にぜひお読みいただきたく、心から本書を推薦したい。