この本はほんとうに優れものだ。著者の竹内謙礼氏は、フリーの経営コンサルタントで、マーケティングの専門家だ。商工会議所などで、中小企業向けのセミナーなどを行い好評だ。
内定獲得のための就職活動必勝法のようなノウハウ本は数多く出ており、最近では就活支援サービスを行う会社まである。リクルートが最も老舗だが、近年は対抗馬としてマイナビの躍進も著しい。
一方、幼い子供のうちから高学歴を目指して、受験のための必勝法書籍や、エリート教育塾とか進学塾、予備校などは昔から数多い。0歳からの英才教育、いわゆるお受験のための、お稽古事や「お受験」対策塾などだ。
また、「ゆとり教育」という、間違った教育政策の間隙をぬって、「中学受験」がブームとなり、中高一貫校の教育カリキュラムが高く評価されるようになった。東大合格者数ランキングで、上位は殆どが中高一貫校だ。
大学受験向けの予備校は以前からあり、代々木ゼミナール、駿台予備校、河合塾の御三家に、近年はネットやビデオを活用した現役高校生向けの東進ハイスクールの躍進がめざましい。
本書は、これまでバラバラだった、これら二つのジャンル、「就活 」と 「受験」 を一本の糸で繋げたという意味で画期的だ。親によるわが子の教育は、 「就職」 という形で、自ら稼いで自立していくことが最終目的、ということだ。
有名大学卒業という高学歴、そのための受験教育は、結局は豊かな人生を送るための大手有名企業への就職という形で結実する、というわけだ。
なるほど、説得力がある。一流大学に入ることが最終目的ではないし、いい大学を出ても就職難民になったのでは何の意味もない。そういう意味で、著者は8歳という小学生で物心ついた年齢から就活に強い子を育てることが重要と説いている。
本書の結論として、就活に強い子のポイントは以下の8つ。内定3社以上の100名と内定ゼロ社で正社員になれなかった100名へのアンケート調査をマーケティング手法を使って分析した。
1.第一子は第二子に比べ就活に強い(親への責任感)
2.働く母親の姿は就活に強い子を育てる
3.父親や祖父母との会話で世代を超えたコミュニケーション力が磨かれる
4.家族旅行や家族イベントで 「理想の家族像」 を植え付けるのは効果的
5.小学お受験組より中学受験組が就活に強い
6.幼少期の体育系習い事(スイミング、野球、サッカー)は就活に必須のコミュニケーション能力を伸ばす
7.部活を続けた学生、とくに体育系部活は就活に強い
8.英語力について、留学による英会話力よりもTOEICや英検を取った努力の方を就活では評価される
母集団の少ないアンケート結果ですべてを論じることはできないが、概ね、企業の採用担当者も同意する内容だと思う。本書では最後に、大学生からでも間に合う「逆転就活術」が述べられている。
就活に向かう大学生や企業の採用担当者はもちろん、世の中の教育熱心な父母の方々、塾や予備校関係者など、皆さんにぜひ読んでほしい画期的な本だ。