書評ブログ

池上彰『おとなの教養』(NHK出版新書)

池上彰氏は、元NHK記者で週刊こどもニュースのお父さん役で活躍し、茶の間の人気者となったキャスター。

 

その後フリーとなって、民放のバラエティ番組でお笑いタレントなどにニュースの解説をすることで人気を博している。

 

現在は、東京工業大学のリベラルアーツセンター教授として、理系エリート学生向けに現代史などの一般教養を教えている。

 

本書は、世界のトップ大学がリベラルアーツを重視する伝統とその背景を紹介し、日本の一流大学でもリベラルアーツを教える伝統に回帰しつつあることを述べている。

 

池上氏によれば「現代の自由七科」として、以下の科目を採り上げている。

 

1.宗教
2.宇宙
3.人類の旅路
4.人間と行基
5.経済学
6.歴史
7.日本と日本人

 

以上の七科目は要するに、「私たちはどこから来てどこへ行くのか」 ということを学ぶことに他ならない。「自分自身を知ること」、「自分がどういう存在なのかを知ること」 が現代の教養だ。

 

本書によれば、すぐに役立つことは、すぐに役に立たなくなる。変化の速い、激しい現代だからこそ、時代が変わっても応用の効く一般教養を学ぶことが大切だ。

 

すぐに役に立たないことが、実は長い目で見れば役に立つ、ということだ。

 

池上氏の解説は子供でもわかるのではないかと思うほど、分かりやすい。本書もその例外ではなく、難解な教養について実に簡潔に分かりやすく解説している。

 

学生はもちろん、社会の第一線で活躍する全てのビジネスマンに本書を強く薦めたい。