山田順氏は、1952年生まれで立教大学を卒業後に光文社に入社。『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務めた。
2010年からフリーランスとなり、ジャーナリストとして取材・執筆活動をするかたわら、紙書籍と電子書籍の両方をプロデュースしている。
本書は、国連の人口統計や、総務省「国勢調査」や国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」などの統計資料を分析して、日本の将来予測を行ったものだ。
2030年や2050年、さらには2100年まで見通した将来予測は、様々な国際機関、情報機関、メディア、経済研究所などで行われているが、その根拠が分かりにくいものが多い。
本書の中で著者は、「未来予測に必要なのはたった二つの要素だ。」 として、次の2点を挙げている。
1.人口の増減
2.教育レベルの高低
人口が増えていく国や教育レベルが上昇していく国の経済が発展し、GDP成長率も高くなっていく、ということだ。
そもそも一国の経済は、生産年齢人口(15歳~64歳)の現役世代が、従属人口(14歳以下および65歳以上)を支える構造になっており、生産年齢人口が増える人口ボーナス期に経済は成長する。
日本の高度経済成長はその典型で、現在の中国経済も同様だ。しかし、日本はすでに少子高齢化の進展によって、生産年齢人口が減少する人口オーナス期に入っており、成長は難しい。
つまり、以下のサイクルが起こっている。
1.少子化の進展
2.高齢社会への移行
3.労働力人口の減少
4.総人口の減少
5.国民経済の縮小
現在は世界の成長センターと言われるアジアだが、日本・韓国・中国の三カ国は、そろってこの負のサイクルに入ってきている。
世界人口は、現在の72億人から2050年には96億人、2100年には109億人に達するという予測だが、人口増加は途上国、とくにアフリカとアジアで大半が起こる。
とくにアフリカは現在の10億人から40億人へと4倍の増加が見込まれている。それに対して、先進国は人口減少、経済縮小のトレンドだ。
唯一の例外がアメリカで、3億人強の人口が4億人を超えるという。経済成長も持続していくことだろう。
本書では、日本の将来に焦点を絞って、経済社会がどのように変わっていくのか、以下のような整理うで、分かりやすくリアルにその姿を描き出している。
1.人口減に勝てないビジネス
2.日本・中国・韓国の衰退する未来
3.超高齢社会、老人しかいない街
4.老人の街でやる2020年東京五輪
5.デトロイトの破産と夕張市の現状
6.ものづくりニッポンの衰退
7.2020年、日本車消滅という衝撃未来
8.仕事を機械に奪われて失業
9.英語ができないだけで貧乏暮らし
10.ニッポンを出ていく富裕層
11.巨大債務により上がらない給料
12.増税と監視で締め上げられる社会
13.ポルトガルと日本の類似性
人口も減り、教育も世界のトップレベルからおいて行かれたニッポンの未来は厳しい。ひとりでも多くの若者や志ある有識者が本書を手にして、日本の将来を切り拓いていくことを念願したい。
ビジネスでは先を読むことが競争を征する時代、すなわち情報社会に入っている。多くの経営者やビジネスパーソンに本書を薦めたい。