小沢正光氏は大手広告代理店の博報堂で、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務める広告分野におけるプレゼンのプロだ。
数多くのクライアントに対するプレゼンテーションの経験から積み上げたノウハウを、「プロフェッショナルのプレゼンとはかくあるべき」 と言う形で、プレゼンの要諦を纏めたのが本書だ。
本書によれば、プレゼンで最も大切なのは、「一言でいえば、このプレゼンでは何が言いたいのか」 をはっきりと伝えることだ。プレゼンの中で、結論を一言で言えるように準備する、ということだ。
そこまで、プレゼンの受け手に何を伝えたいのかを、明確に整理して絞り込むことが大切なのだ。通常、受け手はプレゼンターに比べて、提案内容に関する情報もないし、背景知識ももっていない。
あくまでも受け手の立場に立って、何が聴きたいのかということを考え、それをしっかり踏まえた上で、理解されやすい結論やその根拠を伝えるのがプレゼンの本質だ。
プレゼンターは通常、提案したい内容についてはプロであるし、様々な関連情報を持っているため、すべて事柄をプレゼンに盛り込んで、数多くの情報を伝えたくなってしまうものだ。
そこをグッと堪えて、プレゼンで伝える中身を絞り込み、相手に理解されやすいように構成を準備することが、プロフェッショナルなプレゼンのポイントになってくる。
著者は、これまで手掛けてきた多くのプレゼンにおける、成功と失敗の事例から、以下のような具体的なアドバイスを述べている。
1.場の空気を大切にしてプレゼンを進行する
2.場に慣れて心の準備をするため会場の下見を行う
3.プレゼン原稿は用意せずに、場の空気に合わせて言葉を選び、話の順番さえ入れ替える
4.話し方のテクニックではなく、論理で勝負する
5.意思決定者がプレゼンの場にいないケースも考慮して、決定者に伝えやすい、再現性の高いプレゼンとする
6.プレゼンの結論は短く、簡潔に、論理的な根拠を明確にする
現代のビジネスは、情報社会におけるグローバル競争という厳しい環境にあり、プレゼンで勝負が決まるケースも多くなっている。多くのビジネスパーソンがプレゼンのスキルを磨かざるを得ない状況だ。
本書は、プレゼンの基本をオーソドックス且つ具体的に伝えてくれていて、さすがにプロの書いた本だ。業界を問わず参考になると思うので、多くのビジネスパーソンに一読を薦めたい。