三田誠広は早稲田大学の出身で、1977年に『僕って何』で芥川賞を取った売れっ子作家だ。つねに自分探しをしている姿勢に共感し、また自分の先輩でもあるから著書をフォローし続けている。
いわゆる全共闘世代なのだが、私より10年ほど上で、当時のことは三田氏の著書から知ることが多い。本書は、三田氏の著書の中でも異色の書で、息子の中学受験を父親の立場から描いた泣き笑いの物語だ。
中学受験にチャレンジする親の「バイブル」と言われる本で、今は中古本か図書館でした手に入らないが、人を教える立場にある人はぜひ読んでもらいたい。涙と笑いなしでは読めないほど面白く、お薦めだ。
私は息子の中学受験の準備をしていた頃、噂を聞きつけてむさぼるように読んだ。中学受験は半分は親の受験と言われるほど親の役割も大きい。また、情報戦と言われるくらい、受験に関する情報収集が大切だ。
そうした中で本書は中学受験には必読の書だろう。とにかく親の悩み、親の負担が深くて重いのが中学受験だ。まだ小学生の幼いわが子に、こんなに勉強を強いてもよいものだろうかと。
現代の中学受験は大手学習塾なくして考えられないが、三田氏は自らが「塾長さん」となって、子どもを塾に行かせずに名門進学校の受験にチャレンジした。その努力と奮闘ぶりには、誰もが頭が下がる思いだろう。
思い通りにならない教育や人の指導。本書はすべての指導者に、その原点を教えてくれる。大きな示唆を与えてくれる三田氏の力作をぜひとも薦めたい。