書評ブログ

アタマの体質改善をしよう!

ふだんカラダを動かしていない状態で、急に運動をすると骨折をしたり、ギックリ腰になったりします。それと同じことが、実はアタマにも言えます。ということで、今日の推薦書はこちらの本です。

 

武藤新二 『アタマの体質改善』 (日本経済新聞出版社)

 

この本は、慶應義塾大学を卒業し、大手広告代理店の電通に入社してコミュノケーション・デザイナーとなった武藤新二さんが書いた「思考・発想・企画力」をアップするための「トレーニング書」です。

 

「社会人になってたるんだのは、お腹じゃなくて頭かも知れない」という問題意識のもと記された書です。「論理を学ぶより、アタマに汗をかく。」 それは、仕事にも人生にも効く、効き目は以下の5点です。

 

1.ここぞという仕事の時の、「一瞬のふらめき」が偶然から必然に
2.毎日の単調な身支度や通勤が、自分だけの「密かな楽しみ」に
3.人との会話や商談の場面で、「相手に伝わる言葉と行動」が即座に
4.「これまで学んだ知識や手法」が、実践で使いこなせるように
5.「発想トレーニング」で、「湧きでるアイデアと企画」が豊富に

 

広告業界の最前線で走り続ける著者が、22年間におよぶ様々な経験から学び発見した「アタマの体質改善トレーニング」を全公開しています。

 

それは、苦しくもつらくもない、場所も道具も選ばない、日常にちょっとプラスすればできることばかりです。広告業界のトップ企業である電通の社内プロジェクトを数多く手掛けてきた武藤さんの実践法は参考になります。

 

現場感覚にあふれたエピソードとともに語られる実践法の中には、会社では教わることのない秘策があります。日々の小さな一歩から、大きな変化が生まれるでしょう。全部で45の発想トレーニングの中で、印象に残ったものを以下に紹介します。

 

1.2つの「ふへん」を探す - 「普遍」と「不変」
2.広告のボディコピーを読み解く - 込められた思いや意図を感じる
3.ビールをバラバラにする - 分解の発想から企画は生まれる
4.エピソードで語る - 具体的な感情や行動で表現する
5.ごはん日記をつける - 流れていく日常にくさびを打つ

 

6.写真集を「自費出版」する - 編集能力を身につける
7.とりあえず、お茶する - 実際に会うことで刺激が得られる
8.現場に足を運ぶ - 知識を知見に変える
9.「3つのT」(= Talk, Think, Try )で質問する - 相手の本音と真意を引き出す
10.カフェにこもる - 「単なる思いつき」は最初に出し切っておく

 

これ以外にも、「7つの海」(= 領域)で思考するという、有益な考え方を提唱しています。「セブンシーズマップ」と名付けられた7つの領域は以下の通りです。

 

1.商品と市場
2.人(お客さま・ターゲット・消費者)
3.流通(売り場・買い場)
4.消費・生活シーン
5.メディア・クチコミ
6.トレンド・社会環境
7.企業シーズ

 

これらは、ポーターの「競争優位の戦略」やコトラーの「マーケティング理論」でも共通の概念が提唱されていますし、ケイパビリティ派の経営戦略論の考え方も入っていて、合理的な思考法となっています。

 

この本の巻末には付録として、「発想トレーニング」が付いています。これは著者が電通の社内で若手社員に向けた研修や社外セミナーでよく使っている3つのトレーニングプログラムを紹介したものです。

 

これはもともと、広告のアイデアや企画を考えるための基礎能力をつけるためのトレーニングプログラムですが、それ以外の分野でも十分に応用がきくものです。これをやってみるだけでもこの本の価値があるでしょう。

 

では、今日もハッピーな1日を!