雑誌 『BRUTUS』は、マガジンハウスが月2回発行する新たな時代のエピキュリアンを提案する男性誌だ。毎回、時代の潮流を反映した様々な特集が組まれていて興味深い。
今回の特集は「読書入門」だ。情報化社会と言われる現代は、インターネットやSNSの発展・進化の中で、「読書」や「本」に対する評価、取り組みが大きく二極化している。
本書の中にある記事によれば、たくさんの本を読む職種は、物書きや作家、大学教授、学生といった人々ではなく、IT系、ソフトウェアのエンジニアたちだという。
彼らは、テクノロジー関連はもちろん、ビジネス書やマーケティング本から経済学書、ノンフィクション、最新の新書まで幅広く本を読んでいる。
彼らは、今起きていること、人々の関心事などを、ネット以外の部分から吸収し、ビジネスに役立てようと考えている。
もの作り中心の時代から知識集約型産業の時代となって、人と違った情報、アイデアだけがビジネス(=お金)を生む時代となった。そんな情報社会の現代において、人と違った情報をどこから得るか、に価値が移っていくのは当然だろう。
本雑誌の特集は以下の構成になっている。
1.20人の本好きの読書術 (古市憲寿・角田光代・柴田元幸・並木裕太・蒼井優ほか)
2.小説家を作る読書履歴 (阿部和重・伊坂幸太郎)
3.読書本の読書術
4.” つながる ” 書店
5.目利き書店員が57人が選んだ2015年の課題図書
この雑誌の特集は、読書が趣味という人、読書が人生の相当部分を占めている人にとって、堪らなく好奇心を掻き立てられる。本誌に登場する本好きの方々は、それぞれ好みも価値観も、読書履歴も異なる。
そういう意味で、自分に合った人も見つかるし、自分には気づかない新たな本との出会いがある。私が近い感覚や読書傾向を持っているのが、20人の中では並木裕太氏だ。
並木氏の推薦書一番手は、ダニエル・ピンク著 『フリーエージェント社会の到来』 だ。自分の人生を変えたとまで絶賛しており、実は私もまったく同感だ。
本誌の中でもう一つ、大きな感銘を受けたのが、上記3の「読書本の読書術」だ。読書本は昔から数多く出版されており、また現代でも、新たな切り口の読書本がどんどん出版されている。
本誌では、縦軸に「乱読ー精読」を、横軸に「教養ーノウハウ」を取って、4箇所のカテゴリーに「読書本」をポジショニングしている。
例えば、「乱読・教養」のエリアには佐藤優 『知の読書術』、松岡正剛 『多読術』 などが来る。また、「精読ー教養」エリアには、井上ひさし『本の運命』、山口瞳『私の読書作法』などだ。
一方、「乱読ーノウハウ」エリアには、外山滋比古『乱読のセレンディピティ』、永江朗『本を味方につける本』など、「精読ーノウハウ」エリアには、大澤真幸『問いの読書術』、加藤周一『読書術』などが、それぞれ来る。
それぞれのエリアで8冊ずつ、計32冊を紹介しているが、いずれも「読書」について見識が述べられていて、読書の指針として相応しい書ばかりだ。
私も、この32冊の中で相当数の書籍を読んでいるが、いずれ全てを読むつもりだ。少し時間をかけてでも、このブログにて内容を紹介していきたい。すでに数冊は紹介済みだ。
本誌は読書好きの方はもちろん、今後、読書に真剣に取り組んでいきたい方々には得るものが大きい特集だ。できるだけ多くの方に手に取っていただき、本誌のエッセンスを学ぶよう推薦したい。