『週刊エコノミスト』 は、毎日新聞社が発行する経済専門の週刊誌で、12/30・1/6迎春合併号である本誌は、「世界経済2015」 がメイン特集だが、注目したいのは 「読書会ブームが来た!」 というサブ特集だ。
本誌によれば、先の見えない我が国では、全国的にじわじわと読書会がブームになってきている、という。それは全国規模の会から地方の取り組みまでさまざまだ。
読書会の主催者にインタビュー取材も行っていて、読書会に参加する人々について聞いている。最も多いニーズが、「視野を広げたい」 という欲求だ。
今自分が所属している業界が、この先どうなるか分からない。もっと広く経済や経営につながる社会の事象を見るようにならなければという危機感だ。
日本最大級の読書会コミュニティーとして知られるのが 「猫町倶楽部」 だ。会の名前は、萩原朔太郎の散文詩風の小説 『猫町』 から取られている。
通常の参加者は100人程度で、多いときには300人にも達する。開催日時と場所、課題図書をネットで告知すると、あっという間に集まってしまうほどの人気だという。
これまで名古屋をはじめ、東京、関西で400回以上も読書会を開催してきていて、ロシア文学者の亀井郁夫氏やミュージシャンで作家の菊地成孔氏を招くなど運営力もある。
そのほか、「猫町倶楽部」 主催の 「仮面読書会」 (猫町アンダーグラウンド)に、本誌記者が参加取材をした記事も掲載されている。参加者が仮面を被って背徳的な小説を語り合う、18歳未満参加不可・大人の読書会という、ユニークな催しだ。
「猫町倶楽部」 の代表者である山本多津也氏は 「自分だったら絶対に手に取らない本が読める、まるで違う解釈で読んでいる人がいるなど、個人の読書では味わえない経験が魅力」 と、読書会のメリットを語っている。
さらに、「ああ面白かったで終わらず、人前で本の魅力や感じたことを語ることで、自分の考えを再確認し、定着させることができるのも魅力だ」 ということだ。まさに、アウトプットによる定着だ。
課題図書に合わせたドレスコードを課すなど、和気あいあいとした雰囲気となる遊び心に満ちた仕掛けもあり、この読書会で出会って結婚したカップルがこれまで30組もいる、という。3ヶ月に2組のペースだというから驚きだ。
これ以外の 「読書会」 として、以下のような会が採り上げられていて興味深い。
1.書評家・杉江松恋さん主催 「読んでから来い!」
2.山梨県甲府市春光堂書店主催 「まちなか読書会」
3.松岡亜樹さん主催 「ツンドクラブ」
4.米国アスペン人文学研究所主催 「エグゼクティブ・セミナー(ES)」
5.日本アスペン研究所主催 「エグゼクティブ・セミナー(ES)」
さらに、前田勉 愛知教育大学教授の 「江戸時代の 『会読』 などの発展の歴史」 やフリーライター永江朗氏による 「ソーシャルリーディングが変える未来の読書」 が投稿として掲載されている。
本特集は、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグの 「サードプレイス」 を紹介して締めくくっている。第一の 「家庭」、第二の 「職場または学校」 から隔離された 「第三の場所」 という概念だ。
気安く飲食ができて、アクセスしやすく、気のおない人々が集まってくるが拘束力はない場所。居酒屋やカフェなどのような場所を人々は求めている。「読書会」 もそうした場所と同じ理由で求められているのではないだろうか。
本が好きな人はもちろん、「サードプレイス」 を求めるすべての人々に、本誌をサブ特集を薦めたい。