世の中には成功するための指南書がたくさんあります。日々、どのように生きていけば成功するのか、どのような習慣を身につければよいのかを説いています。
一方で、成功をあきらめてのんびりと自分らしく生きる方法を指南する書物もたくさん出ています。そこには、成功を目指すよりも自分らしく生きることを優先するべきであることが書かれています。
どちらのタイプの本もそれぞれの価値があり、それぞれの生き方を求めている人たちがいます。しかしながら、多くの人はそこそこ成功したいと思っていながら、だからといって成功のためにあくせくしたくない、ラクに生きたいと思っています。
そうした苦しい目に遭わないで軽々と生きることを説く本があります。今日は樋口裕一さんのそんな本を紹介します。
樋口裕一『頭のいい人の「軽々と生きる」思考術』(だいわ文庫)
この本は、小論文や作文などの文章指導のプロである樋口裕一さんの自らの体験から「軽々と生きる」思考術を分かりやすく解説した本です。
まず冒頭で結論が述べられていて、「たかが自分」と「されど自分」の両方の思考法を身につけることが「軽々と生きる」ことにつながるということです。
「たかが」思考とは、「偉そうなことを言ったって、せいぜい自分なんてそんなものだ」という「相対化」の思考です。「今こうして自分は相手を非難しているけれども、こちらにも落ち度はないだろうか」と考えるものです。
他者の中に自分というものを置いて「相対化」します。「相対化」することにより「上には上がいるはず」という視点が持てます。
一方、「されど」思考とは、「とはいえ、自分もそれなりのものだぞ」という「非相対化」の思考です。例えば「今回はミスをしたけど前はうまくいったじゃないか」と自分の能力を冷静に受け止め「非相対化」する考え方です。
「たかが自分、されど自分」の思考法とは、言い換えれば「客観性」と「自信」のバランスをキープする思考術とも言えます。」「たかが」と「されど」のどちらかに偏ってしまうから生きづらくなる、というのが樋口さんの主張です。「飄々と生きる」という言葉がありますが、樋口さんが説くのはまさにそうした「生き方」です。
樋口さんは、そうした視点で見ると世の中には二種類の人間がいると言います。「たかが・されど」思考でラクに生きるコツを知っている人と、そのコツを知らずにムダに疲れている人です。そう考えると、この本は凄い本ですね。
では具体的にどう思考してばいいのか、この本で提唱している12の思考術を紹介しましょう。
1.ブレてもいい-「本当の自分」幻想を捨てよ
2.正しい人でなくてもいい-複眼力を身につけよ
3.ありのままでなくてもいい-自己演出のスキルを磨け
4.いい人でなくてもいい-「許容」と「人間の幅」の関係
5.みんなを好きにならなくてもいい-人間関係を固定的に考えるな
6.居場所を探さなくてもいい-つながり依存から自立する
7.パターン思考でもいい-迷わないための考え方の「型」
8.今ここにとらわれなくてもいい-同心円発想で不安を解消
9.やるべきことを減らしてもいい-自分の核を育てる時間術
10.自慢してもいい-得する生き方の極意
11.悟らなくてもいい-ネガティブの効用
12.比べなくてもいい-幸福の尺度は自分で見つけろ
いずれの思考術も「バランス感覚」が大切だと教えています。やはり複雑な世の中にあって先行きの予測はつかず、いろいろなことが起こることに対して柔軟に考え、対処すること、変化することが重要なのでしょう。
私がとくに共感するのは、最後に挙げている「幸福の尺度は自分で見つける」という考え方です。世の中は完ぺきではないし、自分の評価は自分だけができるものだと私は考えています。
「人生の指揮権」を絶対に手放すことなく、自分が「幸せ」だと思う基準で生きること、それが「自分が主役の人生」であると思っているからです。
では、今日もハッピーな1日を!