「バブル崩壊以降、日本企業は、グローバル化やIT技術の革新といった、新たな潮流に後れをとってきた。企業が稼げなくなると、賃金が上がらず、消費が落ち込む。すると企業はさらに稼げなくなり、賃金も一層上がらない・・・こうした ‘’負のスパイラル‘’ が長年続いてきた。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、2022年9月に放送した『NHKスペシャル ‘’中流危機‘’ を超えて』を書籍化した、こちらの書籍です。
NHKスペシャル取材班『中流危機』(講談社現代新書)
この本は、日本の中間層はなぜかくも貧しくなったのだろうか。そして、負のスパイラルから抜け出すために、国や企業、そして個人はいったい何ができるのか。日本人と日本経済を蝕む「中流危機」の病巣に迫り、再生への処方箋を探った書です。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.幻想だった中流の生活
2.夢を失い始めた若者たち
3.追い詰められる日本企業
4.非正規雇用 負のスパイラルはなぜ始まったのか
5.デジタルイノベーションを生み出せ
6.リスキリングのすすめ
7.リスキリング先進国ドイツに学ぶ
8.試行錯誤 日本のリスキリング最新事情
9.同一労働同一賃金 オランダパートタイム経済に学ぶ
この本の冒頭で著者は、「1994年に505万円だった中央値が2019年には374万円。25年間で実に約130万円も減っているのだ。」と述べています。
また、正社員の生涯賃金は、1993年は男性で3億2410万円が2019年には2億8780万円に、女性は2億7750万円が2億4030万円と、それぞれ3,630万円減、3,720万円減となっていると指摘しています。
本書の前半では、「幻想だった中流の生活」ついて、以下のポイントを説明しています。
◆ 上がらない正社員の基本給
◆ 収入が減って教育費も奨学金で子どもに負担
◆ 夫婦の会話が「お金」ばかりに
◆ 親世代のような「中流の暮らし」は望めない
この本の中盤では、「夢を失い始めた若者たち」「追い詰められる日本企業」および「非正規雇用 負のスパイラルはなぜ始まったのか」ついて解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 若者に広がる投資と副業
◆ キャリアアップの道が絶たれる非正規社員
◆ 企業の価格競争が激化し、稼げなくて、給料が減少
◆ 企業の利益減→給与減→消費減→企業の利益減→給与減・・・・
◆ デフレ不況下で負のスパイラル
◆ 企業の利益減→投資減→イノベーション難→賃金減→消費減→企業の利益減・・・
◆ 1999年の派遣法改正(ポジティブリスト→ネガティブリスト)が大きな転機に
◆ 1997年ILO(国際労働機関)総会で派遣法自由化の条約改正
◆ 正社員の雇用を守るために賃上げ断念と非正規社員の増加
本書の後半では、「デジタルイノベーションを生み出せ」「リスキリングのすすめ」「リスキリング先進国ドイツに学ぶ」「試行錯誤 日本のリスキリング最新事情」および「同一労働同一賃金 オランダパートタイム経済に学ぶ」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 中流再生のための処方箋は、人材への投資
◆ デジタルイノベーション
◆ リスキリング
◆ 同一労働同一賃金
◆ 人材投資でマインドチェンジを
◆ 世界で家族するリスキリング
◆ AIやデジタルマーケティングに精通した外部人材の採用コストと比較して社内人材のリスキリングのコストは6分の1(期間は12~18カ月)
◆ 日立製作所は研修機関「日立アカデミー」を設立してデジタル人材を大量育成
◆ ドイツが推進するインダストリー4.0による「スマート工場」
◆ リスキリングによって工場の雇用が守られる
◆ 社内人材のリスキリングのポイントは「時間」と「実践の場」
◆ 中小企業でリスキリング成功のポイントは、①スモールスタート、②専門チーム、③対象者の異動・配置転換、④成果を昇給・昇格制度で評価
◆ オランダで女性の社会進出が同一労働同一賃金の礎に
◆ 社員を幸せにすることが企業の使命
◆ 同一労働同一賃金の大原則に立ち返る
◆ 同一労働同一賃金の先進事例:イトーヨーカ堂
この本の締めくくりとして著者は、リスキリングも企業依存からの脱却が鍵を握ると述べています。
あなたも本書を読んで、「中流危機」の実態を把握して、再生への処方箋として鍵になるリスキリングに取り組んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3235日目】