「虫が見る世界とサルが見る世界をもう一度、眺め直してみたい」と述べて、「日本人はことさら人間中心の世界をつくってきたわけではなく、とりわけ虫をはじめ身近な動物たちに思いを寄せて、彼らのほうから眺める自然というものを心の中に入れてきた」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、1937年神奈川県生まれ、東京大学名誉教授、医学博士、解剖学者の養老孟子さんと、1952年東京都生まれ、霊長類学者・人類学者、理学博士、京都大学総長の山極寿一さんとの対談を書籍化した、こちらの新刊書籍です。
養老孟子・山極寿一『虫とゴリラ』(毎日新聞出版)
この本は、「人間が生まれながらにして持つ感性のは生物としての倫理がある。それを大切にして、人間以外の自然とも感動を分かち合う生き方を求めていけば、崩壊の危機にある地球も、ディストピアに陥りかけている人類も救うことができる」という問題意識で、「虫屋」と「サル屋」という、人間を外から眺める視点が一致している養老孟子さん、山極寿一さんの対談を書籍にしたものです。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.プロローグ 共鳴する世界
2.私たちが失ったもの
3.コミュニケーション
4.情報化の起源
5.森の教室
6.生き物のかたち
7.日本人の情緒
8.微小な世界
9.価値観を変える
10.エピローグ 日本の未来像
この本の冒頭で著者は、「自然に対する感覚を失って、人間が機械的な反応しかできなくなったって気がするんです。」と述べています。
自然は人間が考えている以上に簡単に変わるし、人間が変えているということを、人間が知らない、と著者二人は指摘しています。
さらに、自然の生物を通して人間の進化と自然との共生に関する変化について、「コミュニケーション」、「情報化」、「脳の進化(容量拡大)」、「日本人の情緒」という視点で、二人の学者から見た捉え方を解説・提唱しています。
私がとくに感銘を受けたポイントは以下の通り。
◆ 接触による「つながる感覚」の重要性
◆ 人間の好奇心と言葉による「認知革命」が情報化の起源
◆「自分」と「相手」を交換できることが人間の離陸
◆ 人間の言葉が「蓄積する文化」をつくった
◆ 人間は「意味」を求めすぎでしまう
◆ 情報が人間をコントロールする時代に
◆ コンクリートの都市設計から、木造建築の自然に溶け込む設計に
◆ 日本人は環境と一体化して物事を捉える感性や習慣を古くから持っていた
本書の後半では、「微小な世界」と「価値観の変化」をテーマに、二人の対談が締めくくられています。主なポイントは以下の通り。
◆ 道路のアスファルト、コンクリート、側溝などが自然のバランスを破壊
◆ 失われる土地への愛着、「原風景」
◆「複線型」社会、二重生活のススメ、参勤交代(都会という仕事場とは別に、自分の生きる場所を)
◆ 未来の社会にとって大切なことは、何よりも安全・安心を保障すること
あなたも本書を読んで、真に持続可能な社会創造をリードする日本になるために、何が大切なのかを考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2431日目】