伝染病対策の歴史、病原体の種類や性質、伝搬経路と遮断法など、感染症の脅威に正しく対処するための基礎知識を伝えてくれる本があります。
本日紹介するのは、1040年生まれ、東京大学医学部卒業、同大学院博士課程修了、国立予防衛生研究所研究員、国立公衆衛生院衛生微生物学部長、国立感染症研究所感染症情報センター長などを経て、同研究所名誉所員、大妻女子大学名誉教授の井上栄さんが書いた、こちらの書籍です。
井上栄『感染症-広がり方と防ぎ方 増補版』(中公新書)
この本は、コレラから新型インフルエンザまで多様な感染症をわかりやすく解説したロングセラーに、新型コロナウィルスの特徴や予防法を考察した「新型ウイルスが拡がりにくい社会」を加えた増補版です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.病原体の伝搬経路を知る
2.清潔化の歴史
3.清潔社会で起こる感染症
4.世界のなかの感染症
5.新型インフルエンザ
6.エイズ/性感染症
7.新型ウィルスが拡がりにくい社会
この本の冒頭で著者は、出現したばかりの新型ウィルス病への対処法は、「ウイルスがどのようにして動物から人間に来るのか、人間に来たウイルスはどのようにして人から人へ広がるのかを冷静に考えておくこと」であると述べています。
その伝播の仕方を考えておけば、伝搬経路を意識的に遮断することができ、心を静めることができるからです。
そこで本書では、この情報過多の現代、私たちが感染症をどう理解し、対処するか、社会としてどのような予防対策をとるべきかを考えています。治療よりも予防が重要である病気が、感染症なのです。
この本の前半では、病原体の伝搬経路について考察しています。最初に、2003年に中国で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、多くの先進国で感染患者が出た中で、日本人の感染者がゼロだった理由を仮説として以下の通り紹介しています。
◆ 日本人は握手の代わりにお辞儀をするので手の接触が少ない
◆ 日本人はホテルで土足を脱ぎ、スリッパ(ホテル、または自前)を履く習慣がある
◆ 日本人は食事に箸を使い、手づかみで食べることが少ない(寿司、おむすび以外)
◆ 日本食レストランでは「お手ふき」が出る
続いて、日本の清潔な文化について解説されています。とくに、トイレが不衛生な中国に比べて、日本の場合は糞尿から感染する確率が極めて低い、と指摘しています。
次に、人類の清潔化の歴史と、清潔社会で起こる感染症について考察しています。
清潔化については、「水洗トイレ」と「塩素消毒」という大発明により、清潔文化が普及してきたと説明しています。
清潔社会で起こる感染症については、ノロウイルスや食中毒の実態やワクチンの役割について述べられています。
この本の後半では、世界のなかの感染症について、以下の感染症について、その実態や流行の経緯について解説しています。
◆ 新型ウイルス
◆ 特殊病原体プリオン
◆ 鳥インフルエンザ
◆ スペイン風邪
◆ エイズ、性感染症
本書の最後では、今回の増補版で追加した新型コロナウイルス感染症に関して、「ウイルスが拡がりにくい社会」を考察しています。ポイントは以下の通り。
◆ 人から人への感染経路は、飛沫、手の接触が主(トイレの排便後に注意)
◆ マスクの効用
◆ 手洗いと手の消毒
◆ 変異を起こしやすいRNAウイルス
◆ 感染が起こっても症状が出ない「不顕性感染」
◆ 米国CDC(=Communicable Disease Control:疾病管理予防センター)のような機関の必要性
◆ 人同士の接触機会を減らす「集会の中止」「パソコンを使う在宅勤務」「オンライン診療」「時差出勤」
◆ メリハリをつけた行動(必要ない場合はマスクを外して顔に日光を当てて免疫力を高めるなど)
あなたも本書を読んで、感染症の脅威に正しく対処するための基礎知識を習得して、感染予防の行動をきちんと取りませんか。
2020年6月24日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第135回】ぜひ知っておきたい「感染症-広がり方と防ぎ方」にて紹介しています。
毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!