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恩蔵直人『マーケティング』(日経文庫)

恩蔵直人氏は早稲田大学商学部の教授で、マーケティングが専門。マーケティングと言えば、フィリップ・コトラーの『マーケティング・マネジメント』が代表作として有名だが、この本は分厚くて難解だ。

 

実は、恩蔵氏はコトラーや共著者のケラーといったマーケティングの世界的権威からの信頼も厚く、何版も改訂を重ねている名著『マーケティング・マネジメント』の日本語版翻訳を担当している。

 

本書は、日経文庫という入門書的な位置付けながら、内容は体系的かつ網羅的で、マーケティング理論の要諦をすべてカバーしている驚異的な本だ。入門書としての分かりやすさと、コトラーのマーケティング理論の奥深さを兼ね備える稀有な名著である。

 

難解な経営学の古典を薦め経営コンサルタントの高山信彦氏も、マーケティングに関しては、まずは恩蔵氏の本書を読むことを薦めているほどだ。

 

本社の前半部分には、マーケティングのフレームワークとして重要な「4P」や「4C」、「STP」などが紹介、解説されている。また、「SWOT分析」や「7S」、「5フォース分析」にも触れている。マーケティング理論を学ぶ上で必要な概念はすべて採り上げられていると言ってよいだろう。

 

後半部分では、顧客価値の創造、製品ライフサイクル、ブランド、流通チャネル、価格戦略、顧客コミュニケーションなどが体系的に整理されている。とくに、ブランド戦略については著者の専門とするところでもあり、力が入る。

 

マーケティングの第一人者フィリップ・コトラーの古典的名著を何回にも亘って翻訳・改訂している著者ならではのマーケティング入門書兼専門書である。費用対効果がとてつもなく高い一冊として強く薦めたい。