斉藤淳氏は、1969年山形県生まれで、上智大学外国語学部英語学科を卒業後、同大学国際関係論専攻博士課程前期を修了した。その後、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院を経て、イェール大学大学院政治学専攻にて博士号を取得した。
さらに、斉藤氏は2008年にイェール大学政治学科助教授となり、教える立場にも立ったが、2012年に帰国し、東京都(自由が丘)と山形県(酒田市)に英語と教養教育を行う私塾を開業した。
本書は、変化の激しい現代社会で生き抜く力をどうつけるか、という斉藤氏が目指す教育について、米国の名門イェール大学で実践する教養教育を紹介しながら述べた書だ。
私も二人の子供を育て、今はグローバル展開する企業で、若手や幹部の教育・研修を行う立場として、本書の提唱する教育法には共感する部分が多かった。
斉藤氏によれば、自然科学でも人文科学でも社会科学でも、基本的な学びの作法は同じだ、ということだ。そして、専門分野で画期的な成果を挙げるためにこそ、広い分野に関心を持つことが必要だ、ということだ。
最も大切なのは、どのような専門分野に進むにしても、また社会に出た後になっても、世界共通の学問のルールを知っておくことであり、どんな学問をするためにも必要な、以下の 「3つの力」 を養っておくことだ。
1.「問う力」
2.「考える力」
3.「表現する力」
そしてその準備は、できれば早く、10歳ぐらいから始めるにこしたことはない、というのが著者の主張だ。本書は、以下の以下の7部構成となっている。
1.「グローバル時代」 に必要な知力とは
2.日本の子どもが得意なことと苦手なこと
3.「問う」 ための環境づくり
4.「考える」 ための学問の作法
5.「表現する」 ための読書法
6.「学問」 として各教科を点検する
7.英語を学ぶときに覚えておいてほしいこと
とくに、上記2の「考える力」は先般、このブログでも紹介した、ちきりん著 『自分のアタマで考えよう』 (ダイヤモンド社)で提唱することと共通だ。
10歳という年代は、現在の日本では中高一貫校への入学を目指す「中学受験」に取り組む小学生が多い。中学受験の良い面・悪い面を客観的に評価し、斉藤氏が目指す教養教育とのギャップについても考察している。
著者は、「読書」は、すべての学問の基礎になるとして強く薦めている。本書の後半では本の読み方にも触れ、できれば古典・入門書・専門書というステップを踏むべきだという。
また、本は通読が一般的だが、速読や精読という読み方もある。さらに読書ノートを付けることを奨励していて、以下の4点を記すことをポイントにする 「読書ノートの作り方」 も紹介している。
1.書誌情報・読み始めた日付
2.疑問点とそれを調べた結果
3.要約
4.感想・読み終わった日付
本を読むだけでも意識して時間を取らねばならないが、読書ノートまで付けるのは抵抗のある人も多いだろう。ただ、読書はインプットとアウトプットを同時に行うことで定着率や応用力が飛躍的に高まっていく。
上記の内容を記した読書ノートがあれば、このブログのような書評は簡単に書けるだろう。私も、「これは!」と感じた書籍についてはメモを作成している。あとは、このブログ自体がアウトプットであり「読書ノート」になっている。
本書の最後には、何のために英語を学ぶのかが書かれている。英語を学ぶ方法については斉藤氏の私塾での教えの考え方が記され参考になる。
教育に関心を持つビジネスパーソンや親は多いと思う。ぜひ、すべての方々に本書の一読を薦めたい。