しぼむ「街の本屋」を歩いて、「本を売る」という仕事の本質を問いかけてくれる本があります。
本日紹介するのは、出版流通専門紙『新文化』記者を経てフリーランスになって、出版流通、表現の自由、子どもの権利、労働などのテーマで執筆活動をしている長岡義幸さんが書いた、こちらの書籍です。
長岡義幸『「本を売る」という仕事:書店を歩く』(潮出版社)
この本は、月刊『潮』2015年6月号から2017年7月号に26回にわたって連載した「書店を歩く」をベースにしつつ、構成を見直して改稿したものです。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.「旅」のはじめに
2.しぼむ街の本屋
3.地域と書店
4.街の本屋の挑戦
5.新しい本屋のかたち
6.震災を超えて
7.山陰で出版人を育てる「本の学校」
この本の冒頭で著者は、早朝のラジオ体操とともに開店する横浜市青葉区の「昭和書房」を紹介しています。
もともと60年前に東京・神保町で創業した昭和書房は、南極に日本の観測基地ができた1957年ごろ、先代店主が昭和基地の名にあやかって命名した、と言います。
この昭和書房は、出版物をコアにする街のよろず屋という存在で、高齢化の進む街でなくてはならない存在になった、ということです。
そのほか、本書では、北海道の書店、首都圏の駅ナカ書店、中堅取次の経営破綻など、「しぼむ街の書店」の実態が紹介されています。
さらに全国のユニークな取り組みとして、山梨県立図書館と書店の連携、青森県八戸の「市営書店」、地域密着型の「複合型書店」や「老舗書店」の事例が紹介されています。
また、次のような生き残りのための新しい街の書店のつながりや取り組みが紹介されています。
◆ 街の本屋同士が横につながるNET21
◆ 読者のカルテから1万円分の選書をする「いわた書店」(北海道砂川)
◆ 街づくりから生まれた新しい本屋(福岡・徳山・尾道・熊本・荻窪など)
この本の後半では、東日本大震災の被災地の書店を取り上げて紹介しています。
いずれも街の復興とともに現地の希望として困難な課題に挑戦しています。
本書の最後には、鳥取県と島根県を中心に展開する老舗・今井書店グループ(本社:米子市)が立ち上げた「本の学校」が取り上げられています。
この「ドイツの書籍学校」をモデルにした取り組みは、「出版業界人基本教育講座」など、現役の書店人や編集者、作家、研究者らが講師になり、全国の書店経営者や書店員が勉学に励む場として注目を集めています。
インターネットの普及による「紙ばなれ」、雑誌の不振、Amazon を代表とするネット書籍販売により、書店業界は大きな変動に見舞われています。
書店業界のみならず、取次や出版も含めた出版業界全体の大変革期にあって、書店の役割、とりわけ街づくりや地域コミュニティの中での書店あり方が、いま問われています。
あなたも本書を読んで、「本を売る」という仕事の原点と、「街の本屋」の役割を、改めて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を