航空工学の専門家が、「逆転の発想」で45年間をかけて名器ストラディバリウスを超えるバイオリンをつくった壮大な物語を綴った本があります。
本日紹介するのは、中島飛行機にてヒコーキの設計を行い、戦後は「逆転の発想」で、数々の発明を世に出した糸川英夫さんが書いた、こちらの書籍です。
糸川英夫『八十歳のアリア-四十五年かけてつくったバイオリン物語』(ネスコ 文藝春秋)
この本は、中島飛行機、東京大学教授を経て、組織工学研究所を設立し、『逆転の発想』や『ケースD』などのベストセラーを著わした糸川英夫さんの知られざる物語です。
終戦後にヒコーキの設計が出来なくなったことを悲観して、33歳で自殺を考えていた著者が、熊谷千尋というバイオリニストの依頼で、ストラディバリウスを超えるバイオリンをつくることで自殺を思いとどまったところから物語は始まります。
バイオリンの名は、「ヒデオ・イトカワ号」と言い、何と45年後の1990年に完成し、著者の80歳誕生日である1992年7月20日に、バイオリン「ヒデオ・イトカワ号」を主人公にして、オーケストラ、ソロ、ピアノトリオなどのコンサートを開催する招待状を掲載して、本書の締め括りになっています。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.物語をはじめる前に
2.決意
3.バイオリンの神秘
4.方程式とバイオリン
5.出会い、発見、笑い
6.僕の五線譜
7.完成
8.招待状
この本のタイトル『八十歳のアリア』は、バッハのバイオリン曲『G線上のアリア』にちなんで付けられたものです。
自殺を考えていた著者の糸川さんは、バイオリン奏者の熊谷少年の「先生は隼戦闘機を設計したエンジニアだから、それだけの頭脳でバイオリンを設計したら、百円ぐらいの材料で、1億円ぐらいの音が出るバイオリンができるんじゃないでしょうか。」という言葉で、取り敢えず自殺を執行猶予にして、バイオリンづくりをする決意をします。
著者の糸川さんは、バイオリンの名器ストラディバリウスなどを生んだイタリア北部のクレモナには行かずに、世界一のバイオリンをつくることを決意しました。
その開発の手順は以下の通りです。
◆ バイオリンのお客を「作曲家」と定義
◆ 音響工学を研究-名著『セオリー・オブ・サウンド(音響理論)』
◆ 「音響インピーダンス法」という独創的な振動測定技術を開発
◆ 測定のポイントを、①音量・ボリュームが出ているか、②音質・きれいな音が出ているか、の2点に
◆ バイオリンのE線・A線・D線・G線の4本の弦のうち、E線上の高音が出ていないことを発見
◆ 材料として、北海道の五葉松と楓を採用(クレモナの木と同性質)
◆ エイジング効果で、200年経って最高の音になるバイオリンを3ヶ月で実現
◆ 表板の厚さを薄くし、補強のバス・バーをもう1本増やして高音を出す
◆ 『ヴァイオリンの制作に関する研究』(糸川英夫・熊谷千尋)論文を東京大学で発表
◆ ハーバード大学のサウンダー教授(バイオリン研究)と意見交換
◆ バイオリン製作者の中沢宗幸さんと出会い、調律師もお客と気づく
◆ 中沢さんの提案で、魂柱を取ってバス・バーの下につける改造(重さを克服)
◆ バイオリンじが完成したら自殺の計画も、自然に死ぬ年齢になっていることで取り止め
◆ 中沢宗幸三の妻でバイオリニストの中沢きみ子さんが演奏
◆ 1992年7月20日、著者80歳の誕生日に「コンサート」開催
また、このバイオリンづくりの過程で、著者の糸川英夫さんは、無名のエンジニアから、ベストセラー『逆転の発想』で有名人になりました。それを受けて、著者が述べた次の言葉は印象的です。
「 “ 有名人 ” になったら、それまで “ 非常識 ” と言われていたことが、“ ユニーク ” という言葉におきかえられた。」
このように要約した文章にしてしまうと、45年の壮大な物語の凄さを、なかなか伝えることはできません。
ぜひ本書を直接手に取って、天才エンジニアの糸川英夫さんが、人生の6割の歳月をかけて成し遂げた「バイオリンづくり」の物語を堪能いただきたいと思います。
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では、今日もハッピーな1日を