書評ブログ

『紅白歌合戦の舞台裏 誰もが知りたい紅白の謎と歴史』

年末おおみそかの国民的行事になったNHK紅白歌合戦の舞台裏と歴史について解説した本があります。

 

 

本日紹介するのは、シンガーソングライターとしてデビューした後、日本歌手協会常任理事に最年少で就任し、コンサートの構成演出などを手掛けてきた合田道人さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

合田道人『紅白歌合戦の舞台裏 誰もが知りたい紅白の謎と歴史』(全音楽譜出版社)

 

 

この本は、紅白歌合戦の歴史を整理し、ここまでの国民的行事になってきた経緯や謎、そして舞台裏について詳しく解説しています。

 

 

実は、この本を手に取って読むことにした経緯は、昨年末の紅白歌合戦の最後に放映された「勝敗の採点」について、ネット上で様々な意見が交錯していたからです。

 

 

まず最初に発表された「TV視聴者審査」では、圧倒的に白組勝利、続く「会場視聴者審査」でも、大差で白組勝利でした。

 

 

ところが、「ゲスト審査員の票を加えた総合結果」では、何と紅組が逆転勝利になっていて、紅組司会の有村架純さんの驚く表情が、とても印象的でした。

 

 

そうした経緯をもって、「これではTV視聴者参加の意味がない」、「会場視聴者による審査も意味がない」「視聴者とゲスト審査員との一票の重みが違いすぎる」という、批判の声が多く聞かれました。

 

 

2016年も残すところ10数分になった番組の最終盤で、審査結果について大きな違和感を感じた視聴者が多かった、ということでしょう。

 

 

ネット上では、「白組の勝利が当然」と言わんばかりの書き込みが目立ちました。視聴者投票という世論をバックにそう感じたというわけです。

 

 

しかしながら、私は敢えて、「NHKの決断もやむなし」と感じていて、今回の「紅組勝利も妥当」と考えております。

 

 

こう言うと、実は全国の嵐ファンから総攻撃を受けることになるのですが(現に、我が家族の2名-家内と娘-からは総スカン状態です。)

 

 

では、なぜそう考えるのか。それは、「10年間にわたるNHKの苦悩」がよく理解できるからです。まず、紅組・白組の対戦成績がずっと拮抗してきた歴史が大きく変わり始めた2004年おおみそか第55回紅白歌合戦です。

 

 

この年はアテネ五輪が開催された年で、日本選手の活躍で日本中はそれなりに盛り上がっていたものの、①NHK職員の着服や不正があったこと、②SMAPがヒット曲がないことを理由に出場辞退、③その他にサザン松田聖子ミスチルなど人気歌手も相次いで出場辞退、が重なり、第2部視聴率は39.3%と、史上最低を記録しました。

 

 

ちなみに、この時は小野文恵が司会の紅組が勝利で、通算成績を紅組28勝、白組27勝として、紅組がリードしました。

 

 

実はこの時まで、紅白の対戦成績はつねに拮抗していて、大きく差がつくことはありませんでした。

 

 

ところが、翌年2005年の第55回紅白歌合戦から、その流れが急に変わります。SMAPが復帰してトリを務め、それ以降、2014年の第65回までの10年間で、紅組が勝ったのは、2011年に井上真央が司会をした第62回のみ。あとはすべて、6連勝を含む白組の勝利です。

 

 

10年間で、紅組1勝で白組9勝。その間の白組司会は、山本耕史笑福亭鶴瓶を除き、SMAP中居正弘が3回嵐が5回(第61回~第65回の5回連続)となっています。

 

 

その間、視聴率は徐々に上昇し、第2部視聴率は40%台に復帰しています。ちなみに、嵐が紅白初出場となったのが、2009年の第60回で、翌年から司会で出ずっぱりになりました。

 

 

実は、嵐の出場が紅白歌合戦の視聴率下落を止める切り札になっていて、NHKもそれをよく分かっています。だから出場2回目という初期から、嵐のメンバー全員を白組司会に抜擢し、しかも5年も続けたのです。

 

 

この10年間は、最初はSMAP人気、2009年の第60回以降は、嵐人気で何とか視聴率40%台を維持していたのです。

 

 

しかしながら、嵐が司会で画面に出っぱなしになると、白組ばかりが勝ってしまう、というジレンマにNHKは悩んでいました。いくら視聴率が大切でも。、これでは「歌合戦」の意味がなくなってしまう、ということです。

 

 

結局、嵐の人気投票で、誰が何を歌って、どんなパフォーマンスをしても、必ず嵐人気で白組が勝ってしまいます。

 

 

ちなみに、嵐が白組司会をしながらも初めて白組が敗れた2011年の第62回は、東日本大震災の復興で、なでしこジャパンが日本人に勇気を与えた、として番組にも出演して大絶賛された年です。

 

 

紅白の対戦よりも皆で復興、というムードだったのでしょう。そこになでしこジャパンと好感度抜群の井上真央で紅組が勝ったのでしょう。ちなみに、女優の井上真央は、ついに嵐の松本潤と結婚するという噂もありますね。もしそうなれば、10年間はすべて「嵐ファミリーの司会者」が勝利、ということになりますね。

 

 

話を戻すと、そこでNHKの苦悩の決断により、一昨年2015年の第66回では、何と6年ぶりに嵐を司会から降ろして、井ノ原快彦を抜擢しました。

 

 

狙い通りに、人気女優の綾瀬はるかが司会を務めた紅組が勝利となったものの、何と第2部視聴率は40%を割り、史上最低の第55回をも下回る、悪夢の39.2%に落ち込みました。

 

 

何と、嵐を白組司会から外した途端に、白組の連勝は止まったものの、肝心の視聴率が急降下してしまいました。やはり、番組の間、司会としてずっと画面に出ていた嵐の影響は大きかったのです。

 

 

第1回~第67回の紅白歌合戦の司会者、対戦成績、視聴率の一覧は、こちらから分かります。

 

 

http://bit.ly/2i1Um0s

 

 

さて、ここからは私の推測による分析です。昨年2016年の第67回では、嵐全員ではなく、敢えてメンバーでも比較的地味な相葉雅紀を司会にし、時々他のメンバーが出てくる構成にしました。何とか嵐の舞台露出を増やしながら、ファンが白組の勝利に固執しないような仕掛けにしたのです。紅組司会は井上真央と同じ高感度路線の有村架純

 

 

さらに、ゲスト審査員に対しては、直前打ち合わせの際に、「審査は歌手の人気投票ではなく、あくまでも歌や踊りのパフォーマンスで評価するように」と、NHK事務局から入念なレクチャーを行った、と私は見ています。

 

 

果たして結果は、どうだったのか。まず、第2部視聴率は40.2%と、前年比1%アップでかろうじて40%台を回復しました。でも、嵐全員が司会だった第61回~第65回には41.6%~44.6%(5年平均視聴率42.5%)だったので、かなり低目になりました。

 

 

一方、対戦の方は、TV視聴者や会場視聴者については、圧倒的な嵐人気白組が大差の勝利ヨットの「タモリカップ東北大会」嵐の東北コンサートと日程が重なって宿泊施設が取れずに中止に追い込まれるほどの嵐人気です。

 

 

しかし、ゲスト審査員は人気投票になりませんでした。視聴者票の2票と会場視聴者票の2票で計4票は白組に追加されたのにも関わらず、トータルで紅組が勝ちました。

 

 

ということは、ほとんどのゲスト審査員が紅組勝利と判定したことになります。実際に、私もTV観戦していて、今回は、大竹しのぶ宇多田ヒカル松田聖子(Yoshikiのピアノ伴奏)など、紅組の好パフォーマンスが印象に残りました。

 

 

正直、トリの嵐の唄のパフォーマンスが抜群とは、私個人は評価できません。でも、今回の出演者別の視聴率では、嵐がトップでした。

 

 

では、今後の紅白歌合戦はどのように構成を考えていくのでしょうか。紅白の対戦成績は紅組2連勝になったものの、まだ紅組31勝、白組36勝と5つの開きがあります。(白組6連勝の影響が大きい)

 

 

但し、視聴率はまだ安心できない低空飛行なので、白組司会から嵐を外すことはできないでしょう。また、視聴者参加の旗はNHKとしても降ろしたくない。でも、ルールの明確な説明は求められる。

 

 

私のルール案は以下の通りです。

 

 

ゲスト審査員は、偶数(例えば10名)として、今回と同様、人気投票ではなくて、パフォーマンスのみで厳密に評価する。原則はゲスト審査による判定で勝敗は決めるが、同点(偶数なら同点もある)の場合のみ、TV視聴者・会場視聴者(TV視聴者の2倍カウントなど)の合計にて判定する、というルールです。

 

 

視聴者参加は、その程度にしておいた方が人気投票にならず、司会が誰かによって、視聴率が左右されにくくなるのではないか、と私は考えています。

 

 

 

さて前置きが長くなりましたが、この本の紹介です。本書は以下の2部構成になっています。

 

 

1.紅白Q&A

 

2.紅白の歴史

 

 

この本は、紅白歌合戦がどのようにして定着した行事になっていったのか、という歴史や、様々な舞台裏の話が解説されていて興味深く読めます。

 

 

また、第1回(1951年)から第62回(2011年)までの司会、出場歌手、勝敗、視聴率、その年の出来事が表になっていて、紅白歌合戦の記録(データベース)としての価値もあります。

 

 

本書の出版が2012年なので、この年の第63回から昨年末の第67回までの記録は、残念ながら掲載されていませんが、それでも第1回から第62回までの記録は充実しています。

 

 

あなたもぜひ本書を手にして、年末おおみそかの国民的行事である紅白歌合戦をさらに楽しんでみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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