書評ブログ

『仕事の未来-「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギク・エコノミー」の現実』

「コロナウイルスの感染は遅かれ早かれ収束します。その暗いトンネルを抜けたとき、私たちを取り巻く世界、特に職場を巡る環境は一変しているでしょう。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学マスコミ論を専攻、ニューヨークで新聞社勤務慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現在はKDDI総合研究所リサーチフェロー情報セキュリティ大学院大学客員准教授小林雅一さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

小林雅一『仕事の未来-「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギク・エコノミー」の現実』(講談社現代新書)

 

 

この本は、今回のコロナウイルス禍を契機に失われた雇用は、いずれAIやロボットで代替され、2度と私たち人間の手には戻ってこないという悲観的な見通しやその根拠が説明されている書です。

 

 

 

今回起こっている構造的な変化として注目すべきは、AIやそれを搭載した次世代ロボットなどで仕事を自動化し、業務の効率化や生産性の向上を図る動きです。

 

 

 

本書は以下の5部構成から成っています。

 

 

1.誰のための技術革新なのか?-AIに翻弄される世界の労働者たち

 

2.自動運転はなぜ人に憎まれるのか?-ギグ・エコノミーの先にあるもの

 

3.AIロボットの夢と現実-我々(人間の労働者)と競う実力はあるのか?

 

4.医療に応用されるAI-人から学ぶ人工知能は人(師)を超えられるのか?

 

5.私たちの生産性や創造性はどう引き出されるのか-グーグルとアマゾンの働き方改革

 

 

 

この本の冒頭で著者は、本書の狙いとして、以下の問いを考えていくことだ、としています。

 

 

◆ 頭脳労働さえ自動化するAIの登場によって、私たちの仕事はどう変わるのか

 

◆ この大変化に私たちはどう対応していけばいいのか

 

◆ 生産性や創造性の領域にもAIのような高度技術が介入する時代において、人が働く意味とはいったい何なのか

 

 

 

続いて、インドの新興アウトソーシング会社「アイメリット」で、若者が「AIの教師」という仕事に従事する様子が紹介されています。

 

 

 

実はディープラーニングの教育(教師有り学習)に要する時間は、AIシステムの開発に要する時間の80%を占める、という米国調査会社の報告があります。

 

 

 

AI産業を影で支える労働現場の実態は、「AI教育」という名の「多数の労働者が大量の写真やビデオ映像に、延々と投げ縄のような丸印をつけていく単調作業」なのです。

 

 

 

この作業を見て著者は、大正時代に日本の紡績工場で行われていた作業を描いた『女工哀史』を思い出した、と言います。100年を経た21世紀のインドや中国など新興国「AIの教育作業」に従事する労働者たちは、日本の大正時代の女工と大差ないように見える、ということです。

 

 

 

GAFAに代表される米IT企業は、「人がやりたくない仕事」AI・ロボットに任せ、私たち人類は本来もっと人間的でクリエイティブな仕事に従事すべきだ、としています。

 

 

 

次に、20世紀に出現した大量消費社会を支えたのが「石油」という天然資源であり、強大な力を持ったのが、サウジアラビアに代表される原油産出国だったのに対し、21世紀にはAI産業を支える「データ」という人口資源が重要だ、と解説しています。

 

 

 

AIのディープラーニング開発に、世界で最も力を入れているのが中国で、14億人が昼夜使用するスマートフォン、ソーシャルメディアから写真、テキスト、動画など多彩で大量のデータを巨大企業のサーバーに蓄積し、これを「データ工場」または「ビッグデータ工場」と呼ぶアウトソーシング会社で、AI教育というデータ加工作業を行っているのです。

 

 

 

この「データ加工作業」が、インドのアウトソーシング会社で行っている、教師有りのAI教育と呼ばれる「大量のデータへのラベル付け作業」ということです。

 

 

 

その他の国の事例として、以下のような注目すべき動きをこの本では紹介しています。

 

 

◆ フィンランドの「1%AI計画」(人口の1%にあたる5.5万人にAIの基礎教育を無償で提供するAI人材育成計画)

 

◆ 日本政府のAI計画(AIはデジタル社会の「読み・書き・そろばん」としてAIリテラシー教育を50万人に)

 

◆ ジョブ・オートメーションの罠(エチオピア航空の墜落事故)

 

◆ AIが引き起こす社会的差別(日本の個人向け融資サービスのスコア)

 

 

 

本書の中盤では、「自動運転技術」「AIロボット」について、その夢と現実が描かれています。主なポイントは以下の通り。

 

 

◆ 嫌われる自動運転

 

◆ ギグ・エコノミーの実態と管理の難しさ

 

◆ 自動運転悲観論の台頭

 

◆ IT業界と自動車業界の覇権争い

 

 

 

◆ ロボット活用をすすめるアマゾン(倉庫配送、コンビニなど実店舗)

 

◆ 巡回ロボット、宅配ロボット、ドローン配送など

 

◆ 農業自動化に寄与するロボット

 

◆ 軍事に応用されるAIロボット

 

 

 

この本の後半では、医療に応用されるAIに関する以下の考察がなされています。

 

 

◆ ワトソンの原理的限界

 

◆ ニューラルネットの医療応用

 

◆「人から何かを学んで一人前の医療用AIに成長する」ワトソンとディープラーニングの共通点

 

◆ 画像診断の応用とプライバシー漏洩の懸念

 

 

 

本書の最後で著者は、グーグルとアマゾンの働き方改革を紹介し、「私たちの生産性と創造性がどう引き出されるのか」を考察しています。ポイントは以下の通りです。

 

 

◆ 社員へ「再教育プログラム」により、AIによる業務変革に対応できる力を養成

 

◆ AIで社員の士気を高める

 

◆ グーグルの「生産性向上計画」のポイントは「チームワーク」

 

◆ 成功の鍵は「心理的安全性」

 

◆ 自由と秩序のバランスが今後の課題

 

 

 

この本の締め括りとして著者は、「人は人に認められ、人として尊重されるために働く」と述べています。

 

 

 

あなたも本書を読んで、AIが切り開く「仕事の未来」について、しっかりと考えてみませんか。

 

 

 

2020年6月29日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第140回】AIが切り拓く「仕事の未来」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

 

 

では、今日もハッピーな1日を!【2387日目】