『働かない技術』

2019.09.01 (日)

日本企業の職場環境の中で、「働かないのにはスキルと覚悟が必要だ」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、経営コンサルタントで、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役新井健一さんが書いた、こちらの新刊書籍です。

 

 

新井健一『働かない技術』(日経プレミアシリーズ)

 

 

この本は、「働かない技術」(=業務削減、効率化)のための考え方とともに、これからの時代に「企業人」として生きていくための心構えや、今後必要とされる「真の働く技術」を一部、課長に昇格した2人の人材のその後をストーリー形式でたどりながら解説・提案している書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.プロローグ「働かない」のにはスキルと覚悟が必要だ

 

2.なぜ「働かない技術」が必要か

 

3.ガラパゴス化する職場

 

4.ダラダラ職場が生まれる理由

 

 

5.「働きすぎる」ミドルの末路

 

6.「職場脳」からの脱却

 

7.残業できない職場をどう生きるか?

 

8.エピローグ「働く技術」

 

 

 

この本の冒頭で著者は、VUCAの時代(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)と呼ばれるように、現在の社会経済環境が「予測不能な状態」に直面している、と述べています。

 

 

 

そうした中で、日本の労働人口の49%の仕事がAI・ロボットに代替される可能性が高く、知識労働が求められています。知識労働者が働く8時間の中で、「集中していられる時間」は3時間という報告もあり、その3時間に何をするかが問われているのです。

 

 

 

したがって日本のミドル層は価値観を変えなければならず、その理由は以下の3つです。

 

 

◆ いまどき世代と働くということ

 

◆ 外国人と働くということ

 

◆ 女性と働くということ

 

 

 

次に、日本の職場がガラパゴス化していて、欧米の職場とはなぜ違っているのかを歴史的な背景として、以下の「あるべき人材像」の違いからくると解説しています。

 

 

◆ 狩猟型人材: 個人で完遂でき、かつ個人の能力により成果が出る仕事で求められる人材要件

 

◆ 農耕型人材: 個人で完遂できず、かつ個人の能力だけでは成果が出づらい仕事で求められる人材要件

 

 

 

まず「狩猟型人材」が、その能力をいかんなく発揮するための条件として次のことが挙げられます。

 

 

◆ 外部の立場で成果にコミットメントすること

 

◆ 求められる成果の範囲が定められていること

 

◆ 成果を出すための期間が定められていること

 

 

 

ところが日本の職場は、「メンバーシップ型組織」で、「効率的な仕事」より「丁寧な仕事」が求められ、長時間労働を良しとして評価する風土が長く続いてきました。

 

 

メンバーシップ型とは、特定の企業において職種を選べず、ポストを選べずにキャリアを積みます。それに対して、欧米の「ジョブ型」では、常に特定の職種やポストでキャリアを積んでいきます。

 

 

 

そして現在、日本の職場でも政府主導で「働き方改革」が進んでいますが、「働き方改革」の本質とは、「個人の尊厳と生涯キャリアの自己管理」である、と著者は言います。

 

 

 

つまり、日本の企業人も多様な働き方を選択できる「自由」を得たのですが、「権利」というコインの裏側は「義務」であるし、「自由」の裏側は「自己責任」ということです。

 

 

 

本書の中盤では、「日本人は生産性が低い」のホントの所や、「ダラダラ職場」が生まれる理由を解説しています。

 

 

 

但し、日本型人事管理の本質は、歴史的な背景にあり、それは「ともに同じ貧しさや飢えに苦しんだ」こと、そして「もうあの頃には戻りたくない」という切実な思い、断固とした決意だろう、と著者は説明しています。

 

 

 

日本型人事管理では、階級制度を前提としておらず、貧しさや飢えをしのぐため、「まずは食える賃金を」という電産型賃金体系が出来上がりました。

 

 

 

その賃金体系労働組合の主導のもと、以下の3つの要素から成っています。

 

 

1.年功的平等主義: 賃金の決定要素を勤続年数や家族数など客観的指標に求め、経営者による査定権の介入を排除

 

2.生活給思想: 賃金の80%を「生活保障給」で充当し、企業の生産性に左右されない最低生活を保障

 

3.産業別横断賃金論: 企業の枠をこえて同一産業労働者の生活保障を志向

 

 

 

こうした戦後の日本型人事管理の大枠は、「青空の見える労務管理」、年功的平等主義、生活給思想というキーワードとともに定められたのです。

 

 

 

ここが厳然たる階級社会の欧州や、上位1%の富裕層が国の資産の大部分を所有して「オキュパイ・ウォールストリート」と叫ばれた所得格差の大きいアメリカと日本の違いです。

 

 

 

しかしながら、順調に経済成長が続いている間は日本型人事管理はうまく機能したものの、バブル崩壊以降の日本企業では「誰でも階段を上れる」「皆、将来の幹部候補」という「青空が見える人事管理」を悪用するブラック企業なども現れ、パワハラ相談が急増しました。

 

 

 

著者によれば、パワハラが起こる3つの条件を以下の通り整理しています。

 

 

◆ 役割や権限、また責任など関係性が曖昧であること

 

◆ その行為に教育のためなど大義名分が立つこと

 

◆ その行為が比較的隠しやすいこと

 

 

詳細については、新井健一さんの前著『いらない課長、すごい課長』(日経プレミアシリーズ)をご参照ください。

 

 

この3つの条件を満たすパワハラのほかに、積極的に圧力をかけるのではなく、別の方向性として、次の2つのタイプもあります。

 

 

それは、上司が部下の仕事について、①判断しない、②承認しない、というものです。これが直接、パワハラに含まれるかどうかは微妙ですが、部下を疲弊させるのは間違いない、とこの本では解説しています。

 

 

上司が部下の仕事を判断しなければ、判断ミスを指摘されることも、責任を追及されることもない。情報が不十分とか前例がないなど、あらゆる難癖をつけて判断から逃げ回るのです。

 

 

また部下の仕事を承認しなければ責任を負う必要もないと考えている上司もいて、失敗すれば「部下が勝手にやったこと」うまくいけば「暗黙の手柄」を主張し、いずれにせよ仕事の結果を確認してから部下の仕事に対する賛否を表明する、ということです。

 

 

こうした上司は、モノゴトを判断しないで放置しておくリスクには無頓着で、「リスクをゼロにするために本当は何もしたくない」腹の底では本気で考えていたりするのです。

 

 

 

そのような背景から、現在の日本企業では、以下の2つの人材タイプに分かれていくことになります。

 

 

◆ 役割給人材:「職場のメンバーを育成し、働いてもらう」ことを第一義とする(日本型)

 

◆ 職務給人材:「ポストに求められる職務の範囲内で自ら働く」ことを第一義とする(欧米型)

 

 

 

本書の後半では、働き続ける「自分」を見つめ直すための有用なツールとして、アルバート・エリスの「ABC理論」を紹介しています。

 

 

A.エリス論理療法の創始者で、アメリカの臨床心理療法家の間では、精神分析のジグムント・フロイト非指示療法家のカール・ロジャースと並ぶ「三大心理療法家」の一人として高い評価を受けています。

 

 

 

エリスの「ABC理論」では、以下の3つの要素から説明しています。

 

 

◆ AFFAIRS(出来事)

 

◆ BELIEF(解釈)

 

◆ CONSEQUENCE(結果)

 

 

 

エリスによれば、誰かが何かの出来事に遭遇した際、その結果としてネガティブな感情や気分になるのではなく、その間には解釈(=出来事の受け止め方)が介在する、ということです。

 

 

 

つまり「条件反射的」にネガティブな「解釈」をするのではなく、次のような問いを発して、「新たな解釈」を獲得して、自己を解放するのです。

 

 

◆ その解釈は本当か?

 

◆ その解釈に根拠はあるか?

 

◆ その解釈にハマっていて得なことはあるか?

 

 

 

そのようにして「条件反射的」なネガティブな解釈に待ったをかけて、自己を解放していくのが「ABCDE理論」なのです。つまり、DはDISPUTE(反論)EはEFFECT(効果)です。

 

 

 

この本の最後で著者は、残業できない時代において、以下のような業務改善のフレームワーク「ECRS」を勧めています。

 

 

Eliminate(排除): 既存業務の何かを取り除くことはできないか?

 

Combine(統合と分離): 類似の業務を一つにまとめるか、異なる業務に分けられないか

 

Rearrange(入れ替えと代替): 業務の順序・やり方を変更することはできないか?

 

Simplify(簡素化): 業務を単純にすることはできないか?

 

 

 

締め括りとして著者は、松下村塾での吉田松陰の教えを紹介しながら、「現代版の徳」について考察しています。

 

 

これからAIと人類が仕事を分け合う時代になり、「徳の価値」は上がる一方で、決して下がることはない、と著者は言います。

 

 

 

あなたも本書を読んで、「働き方改革」の本質とは何かについてしっかりと考え、自らの尊厳と生涯キャリアに向き合ってみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!

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