書評ブログ

佐々木裕子『21世紀を生き抜く3+1の力』(ディスカヴァー21)

佐々木裕子さんは、東京大学法学部を卒業後、日本銀行を経てマッキンゼー&カンパニーに入社し、シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイト・パートナーになりました。

 

 

マッキンゼー退職後は、株式会社チェンジウェーブを創立して、企業の 「変革」 デザイナーとしての活動を行っています。変革実現のサポートと変革リーダーの育成に携わっている、ということです。

 

 

本書は、21世紀とはどういう時代なのかを、2050年の世界と日本を描き出すことで明らかにしています。主要なポイントは以下の4点です。

 

 

1.世界の人口は96億人と現在70億人の1.4倍となる。最も人口成長が著しいのはインドとアフリカ諸国。

 

2.日本の人口は1億人を割って、しかも人口の4割が65歳以上という人類史上経験のない超高齢社会となる。

 

3.日本全国の4割が単身世帯、しかも全世帯の4分の1が高齢者単身世帯となる。

 

4.日本のGDPは世界3位から9位に転落し、インドや中国のGDPの12分の1となる。

 

 

さらにIT技術革新が加速し、教育や働くという概念が大きく構造変化する。そうした21世紀を生き抜く力として、著者は次の3つの力を挙げています。

 

 

1.考える力 : 想定外の問題や経験値の無い課題に向き合って何をすべきか考え抜く

 

2.共創する力 : 多様な人々との議論を通じてベストな答えを導き出して実践する

 

3.進化する力 : 自分自身と真摯に向き合い、気付き、学びながら進化する

 

 

そして、これら21世紀スキルの真ん中にある本質的な問いは、「自分が目指したい世界、目指したいものは何か」 という問いです。20世紀が団塊や家族の時代だったのに対して、21世紀は 「個」 の時代ということです。。

 

 

「個」 のアイデンティティ(自分は何者か、何をしたい人か、何ができる人か)が明確にあって、それが一企業や一家族のためだけではなく、社会全体のために存在する、というのが21世紀という時代だ。

 

 

3つの力(考える力・共創する力・進化する力)に、自分が目指すものを明確にする力を加えた3+1の力が、これからの世界を生き抜くための 「21世紀スキル」 だ。

 

 

「21世紀スキル」の教育は、すでに世界で始まっており、自分に限定を設けない「自己肯定感」「自己効力感」が極めて大切になってくる。とくに現代の日本の若者に弱い感覚だ。

 

 

本書は、大きな構造変化が続く21世紀を生き抜く力を、実に的確に説明した書籍だ。ぜひ、すべてのビジネスパーソン、教育関係者、将来世代を育てる親たちに読んでもらいたい本です。名著として心から推薦したい。