書評ブログ

『サイコパス』

「とんでもない犯罪を平然と遂行する、ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう・・・など、サイコパスの脳の謎が、脳科学の急速な進歩で徐々に明らかになってきた。」と説く本があります。

 

 

本日紹介するのは、脳科学者で、医学博士横浜市立大学客員准教授中野信子さんが書いた、こちらの新刊新書です。

 

 

中野信子『サイコパス』(文春新書)

 

 

この本は、「あなたの隣りのサイコパス」を、最新の脳科学が解き明かしている書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.脳科学が明らかにする「あなたの隣りのサイコパス」

 

2.サイコパスの心理的・身体的特徴

 

3.サイコパスの脳

 

4.サイコパスはいかにして発見されたか

 

 

5.サイコパスと進化

 

6.現代に生きるサイコパス

 

7.サイコパスかも知れないあなたへ

 

8.サイコパス研究の課題と困難

 

 

本書の冒頭で著者は、サイコパスを判断する基準として、次のような特徴を挙げています。

 

 

◆ 外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである

 

◆ 恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える

 

◆ 多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える

 

◆ お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする

 

◆ 常習的にウソをつき、話を盛る

 

 

◆ 自分をよく見せようと、主張をコロコロ変える

 

◆ ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手

 

◆ 傲慢で尊大であり、批判されても折れない、懲りない

 

◆ つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う

 

◆ 人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い

 

 

こうした特徴を紹介した上で本書では、これらのうちいくつかに当てはまる人物が、数人は思い浮かぶのではないでしょうか、と呼び掛けています。

 

 

そして、「サイコパスは尊大で、自己愛と欺瞞に満ちた対人関係を築き、共感的な感情が欠落し、衝動的で反社会的な存在です。また、無責任な生活スタイルを選択するといった傾向があります。」と提唱しています。

 

 

本書は、脳科学者である著者が、サイコパスを研究対象として、様々な学説も紹介しながらその全貌を明らかにしようと試みている書です。

 

 

まず、サイコパスの反社会的な行動の要因に関して、次の4つの仮説を紹介しています。

 

 

1.欠如仮説(低い恐怖感情仮説)

 

2.注意欠陥仮説(反応調整仮説)

 

3.性急な生活史戦略仮説

 

4.共感性の欠如仮説

 

 

この中で3番目の「性急な生活史戦略仮説」は聞きなれない言葉で意味が分かりにくいと思いますが、短期間にさまざまな異性と接触し、相手を騙してでも魅了して性交までこぎつけ、たくさんの子供を産ませた(産んだ)方がより多く繁殖できる、といった戦略を取るようなライフスタイルのことです。

 

 

次に、サイコパスの脳については、「扁桃体」と呼ばれる部分の活動が一般人と比べて低いことが明らかになっています。

 

 

「扁桃体」は、人間の快・不快や恐怖といった基本的な情動を決める場所で、「扁桃体」を手術で取り除いてしまうと、否定的なサインを理解できなくなるそうです。他人の痛みが分からなくなる、ということでしょう。

 

 

サイコパスは、正常な理性を持つように見えるのに、「他人の気持ちを理解したり、思いやったりすることが一切ない。他人を傷つけても後悔も反省もしないし、過去の経験から他人の気持ちを学ぶこともできない。」、というアメリカの精神科医ハーヴェイ・クックレーさんの言葉を本書では紹介しています。

 

 

 

これ以外にも本書では、サイコパスに関する様々な研究成果を紹介していて興味深く読めます。以下に、そのテーマを記載しますが、詳細な説明は省略しますので、興味ある方はぜひ、本書をお読みください。

 

 

◆ MAOA(モノアミン酸化酵素のAタイプ)という神経伝達物質について

 

◆ ADHD(注意欠陥・多動性障害)など、サイコパスと精神疾患の合併症

 

◆ 扁桃体と眼窩前頭皮質とのコネクティビティ異常

 

◆ 脳の機能について、遺伝の影響は大きい

 

◆ 生育環境が引き金となって反社会性が高まる可能性がある

 

◆ サイコパスが人類を進化させた

 

 

本書の後半では、これまでの歴史上の偉人が、サイコパスだったと推定される例を、著者の個人的見解として挙げています。これも根拠など、興味ある方は本書をお読みください。その人物のみ以下に紹介しておきます。

 

◆ 織田信長

◆ アームストロング船長

◆ 毛沢東

◆ ロシアのピョートル大帝

◆ ジョン・F・ケネディ

◆ ビル・クリントン

◆ マザー・テレサ

 

 

社会を大きく変革し、既存の社会秩序を破壊するような偉業を成し遂げるリーダーは、確かに共感性が強すぎると改革などはできないので、サイコパス的な資質を持っていた、と言えるでしょう。

 

 

また、近年大きな話題となっているブラック企業の経営者なども、人の痛みを感じる度合が低いと言う意味で、サイコパスと言えるでしょう。

 

 

そして、「反省できない人もいる」、「罰をおそれない人もいる」、「サイコパスの思考方法やふるまいを本人の意思や努力で後天的に変えていくことは難しい」という事実を、しっかりふまえた社会での対策が必要でしょう。

 

 

あなたも本書を読んで、100人に1人という、決して少なくない社会の成員である「サイコパス」について、最新の脳科学に基づいた正確な知識を学んでみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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