書評ブログ

『未婚中年ひとりぼっち社会』

「なぜ未婚が増えるのか?」「誰とどのように生きていけばいいのか?」という二つの問いに答えてくれる本があります。

 

 

本日紹介するのは、1969年生まれ、立命館大学先端総合学術研究科修了(学術博士)、現在は同大学生存学研究所客員研究員能勢桂介さんと、1970年生まれ、千葉大学大学院修了(学術博士)、現在は立教大学・明治学院大学非常勤講師小倉敏彦さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

能勢桂介・小倉敏彦『未婚中年ひとりぼっち社会』(イースト新書)

 

 

この本は、これまでの結婚のあり方にこだわらず、自由と安心を両立させる親密な関係を築くにはどうしたらよいか、を考え伝えてくれる書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.崩壊する「昭和婚」

 

2.結婚における「自由」と「安心」のジレンマ

 

3.「正規職」でも、出会えない?

 

4.結婚を決められない「あれかこれか」の迷宮

 

 

 

5.打ちひしがれる「非正規職」

 

6.独身男の「快楽」と「憂鬱」

 

7.他者を受け入れることと「安心感」

 

8.「持続的な親密性」の再構築

 

 

 

この本の冒頭で著者は、近年、「未婚」が急増していることをデータで分析し、「昭和の結婚観」が崩壊していることをその理由に挙げています。

 

 

 

次に、70年代前後生まれのバブル世代(1960年~1970年生まれ)から団塊ジュニア世代(1970年~1980年生まれ)で、インタビュー時に40代前半から後半だった、中堅大学(地方国立、MARCHレベルの私大)の卒業者にインタビューした事例を紹介しています。

 

 

 

そして現代の結婚にいたる以下のプロセスを提示して、各事例における解釈を紹介しています。

 

 

◆ 職業的・経済的な意味での「一人前意識」を持つ

 

◆ 異性と出会い、交際する

 

◆ 結婚を決意する

 

 

 

さらに、現代社会における「自由」の特徴を、イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズ「再帰性」と「高度近代」という概念を使って明らかにしていることを説明しています。

 

 

 

「再帰性」とは、自己や社会のあり方について、懐疑し、振り返ることによって、自己や社会のあり方が更新されることです。

 

 

 

とくに1990年代以降のグローバル化、IT化を経て、再帰性は社会のあり方を隅々まで再編し、同時に個人の自由度も飛躍的に高められることになって、これを「高度近代(ハイモダニティ)」と呼んでいるのです。

 

 

 

本書の中盤では、現代独身男性の先駆として、哲学者・ケルケゴールを挙げ、著書『あれかこれか』を紹介して、決められない独身男が自分自身を研究した「当事者研究」と述べています。

 

 

 

ケルケゴールは、「選択しないと人格がしのむ」「自分自身を選ばない限り自分が他者になる」といったことを書いています。

 

 

 

それは現代社会の独身男性に見られる「自分中心の自由を手放せない」、あるいは情報社会に特有の「選択肢が多すぎで選べない」という心のあり方から、結婚の決意が出来なくなっているのではという仮説に繋がっています。

 

 

 

本書の後半では、正規職・非正規職に分けて、未婚に向かう原因を、具体的ケースをもとに分析しています。

 

 

 

この本の終盤で著者は、「他者を受け入れること」と安心感、そして「持続的な親密性」の再構築について考察しています。

 

 

 

この本は全体を通して、時代の大きな変化を背景に、「自由」と「安心」をどう両立させていくのかという「未婚」の中年について、心の指針を示していて、ぜひお薦めしたい一冊です。

 

 

 

また、多くの「未婚の研究」に関する参考文献を挙げていて、巻末に一覧があるので参考になります。

 

 

 

とくに次の4冊は、著者が大きな影響を受けた書として紹介しています。

 

 

 

 

 

 

 

あなたも本書を読んで、未婚中年ひとりぼっち社会について、真剣に考えてみませんか。

 

 

 

2020年5月22日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第102回】日本が迎える「未婚中年ひとりぼっち社会」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

 

 

では、今日もハッピーな1日を!