書評ブログ

『まちの本屋』

本屋に生まれ、子どもの頃から本に囲まれて、好きな本を好きなだけ読むことのできる環境で育った著者が、家業を継いだ書店を閉鎖した後、岩手県の書店に再就職して店長を務めながら、「まちの本屋」の役割・使命について書いた本があります。

 

 

本日紹介するのは、さわや書店フェザン書店(岩手県盛岡市)店長田口幹人さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

田口幹人『まちの本屋』(ポプラ社)

 

 

この本は、「まちには本屋が絶対に必要なものだ」と確信している著者の田口さんが、「まちの本屋」について、自分なりの視点で本屋というものを語っている書です。

 

 

「本屋はどこに行っても人でにぎわっている。」、「これだけの人が集まる場所が、他にあるだろうか。」、「本屋は、本と、情報と、そして人が絶え間なく集う場所なのだ。その空間をどう使うか、まだまだ大きな可能性が詰まっている。」

 

 

本書の冒頭で、著者は以上のように、本屋に対する熱い思いを述べています。

 

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

 

1.本は嗜好品などではなかった。必需品だった

 

2.僕はまちから本屋を消した

 

3.本屋はどこも同じじゃない

 

4.一度やると本屋はもうやめられない

 

5.本屋には、まだまだできることがある

 

6.まちの本屋はどこへ向かうべきなのか

 

7.本屋の未来は、自分たちでつくる

 

 

この本は、2011年3月11日の東日本大震災の時に、岩手県盛岡市に本店を持つ「さわや書店」の釜石店で、津波の被害を免れて1週間後に営業再開した途端に、本が殆ど残らずに売り切れた光景から始まっています。

 

 

まだライフラインの復旧も進んでいない被災地の状況下で、本屋を訪れる人が多数いて、少しでも日常を取り戻すために身近にあった何かが手に入らないか、といって思い立ったのが「本」だった、というのです。

 

 

この時に、「本は嗜好品などではなく、必需品だった」と、著者は実感したそうです。

 

 

このあと続いて、本書では著者の経歴や、まちの書店が果たしてきた役割について、実際の著者の経験をもとに記されています。

 

 

とくに驚いたのは、記録的なベストセラーとなった本が、実は爆発的に売れ始めるきっかけを、岩手県の「まちの本屋」に掲げられたPOPが作った、というエピソードです。

 

 

例えば、私も尊敬する作家の外山滋比古さんのミリオンセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)は、刊行から10年経って、「さわや書店」松本大介さんがたまたま、「もっと若い時に読んでいれば・・・そう思わずにはいられませんでした」というPOPをつけたことで、なんと月に100冊売れるようになった、ということです。

 

 

それを知った出版社が、POPをもらって全国に広げ、他の書店でも売れ始めて、どうどう200万部を超えるベストセラーになっています。

 

 

ほかにも、百田尚樹さんのミリオンセラー『永遠の0』(講談社文庫)も、1年間は全く売れなかったのに、読者から届いた本の感想をラジオで読み上げたところ、どんどん広がって、さわや書店1000冊売るのに1ヵ月かからなかった、と言います。

 

 

盛岡の小さな書店で、いきなり著作が売れ出したことに、著者の百田さんも驚かれ、店に来たり講演をしてもらったりという付き合いが始まったそうです。

 

 

その他にも以下のような本を、「さわや書店」では、意識的に売り出して、ヒットを作り出しています。

 

 

この本は、イベントも組み合わせて、介護施設の小さな図書館地元の読者と著者が交流して、一緒に近所の雑草を探索に行ったりして大好評だったそうです。また、書棚の隣りには、こんな本も並べて推薦しています。

 

 

さらに、地元関連の書籍や社会問題を扱ったテーマ情報発信として目立つようにリコメンド展示をして、大きな売り上げを作っています。

 

 

 

また、震災関連の書籍としては、次の本もPRして、大きな反響と成果を挙げています。

 

 

本書の最後では、ネット書店とリアル書店の競合や、さらにリアル書店の中でも大型書店と「まちの本屋」との棲み分けについて、「まちの本屋はどこへ向かうべきなのか」という、著者の見解が記されています。

 

 

生活様式の変化とともに、本との出会いの場も移り変わるのは当然、とした上で、ネット書店や大型書店と、小規模な本屋とは役割が違う、と著者は述べています。

 

 

たとえていえば、ネット書店大型書店「動脈」や「静脈」で、町の書店「毛細血管」ではないか、ということです。

 

 

どれかが健全であればいい、ということではなく、出版社取次も含めて、すべての役割が健全に果たされていくように一体になって盛り上げていくことが大切でしょう。

 

 

また、「まちの本屋」を考える参考文献として、以下の本が紹介されています。

 

 

「本屋に行ったら、思ってもみなかった本を買ってしまった」という経験を持っている人は少なくないと思いますが、それこそが著者が大切にする「売り場づくり」だそうです。

 

 

「出版不況だ、本が売れない、まちの本屋が消えていく・・・・。そんな悲壮な声が聞こえてくる一方で、ユニークな本屋が今、続々と全国に生まれています。」と本書では述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、改めて「まちの本屋」の役割と、存在意義を考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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