書評ブログ

『分断した世界 逆転したグローバリズムの行方』

「新しい “ 魔法の機械 ” の普及による “ 情報の爆発 ” が、人間の欲望による悪巧みを掻き立て、それがバブルから崩壊へと誘うのが近代史の教えだ」と提唱している本があります。

 

 

本日紹介するのは、日大芸術学部在学中「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリを受賞し、メディアを超えて横断的に滑動する高城剛さんが書いた、こちらの新刊書籍です。

 

 

高城剛『分断した世界 逆転したグローバリズムの行方』(集英社)

 

 

この本は、著者の高城さんが自らの目と耳で、世界の分断の現場を実際に見てレポートし、世界で何が起こっているのかを分析している書です。

 

 

 

本書は以下の3部構成から成っています。

 

 

1.統合と再「分断」の歴史

 

2.アメリカの「分断」は民主主義の終焉なのか?

 

3.「城壁」発祥の地、EUの「分断」

 

 

 

この本の冒頭で著者は、1920年代、アメリカの好景気以降の「メディアの近代史」を解説しています。

 

 

ラジオ放送、モノクロテレビ放送、「ニューメディア」と呼ばれるケーブルテレビと衛星放送、ニュース専門局(CNNなど)、パソコン通信、インターネットなどの変遷です。

 

 

著者の仮説は、新しい「魔法の機械」の普及による「情報の爆発」が、人間の欲望による悪巧みを掻き立て、それがバブルから崩壊へと誘うのが近代史の教えだとしたら、スマートフォンと高速ワイヤレス回線が地球の隅々まで普及したいま、必ずバブル崩壊が起こるのではないか、ということです。

 

 

この本は、そうした仮説を確かめるため、歴史を振り返りながら、約1年半をかけて世界中を回った著者のルポルタージュであり、この先世界で何が起ころうとしているのかを予測したものです。

 

 

 

まず世界の統合と分断の歴史として、大きな転換期として、本書では次の5つの事件を挙げています。

 

 

◆ 1989年 「ベルリンの壁」崩壊からグローバリゼーションが開始

 

◆ 1995年 WINDOWS95の登場でグローバリゼーションが加速

 

◆ 1999年 世界の「二極化」の始まり、金融システムを破壊したクリントンとルービン

 

◆ 2008年 リーマン・ショックによる世界的金融危機

 

◆ 2016年 グローバリゼーションの終わりとインターネットの「壁」の出現

 

 

 

とくに最後のステージに入り、金融緩和によって生まれた資産バブルと、国際的な租税スキームが、極端な二極化を生み、人々を「分断」する歪んだ世界を作り上げた、という著者の指摘は鋭い分析で、説得力があります。

 

 

つまり、グローバル企業による「ダブルアイリッシュ」や「ダッチ・サンドイッチ」という高度な租税回避スキーム(合法的な節税策)国境を越えたマネーの流出を招き、世界全体の不平等を拡大させ、税収を通じた所得の再分配や福祉の増進が世界中の国々で機能しなくなってしまいました。

 

 

 

次に、アメリカ大統領選でなぜ、事前の予想を覆してトランプ大統領が選出されたのかを、「ラスト・ベルト」と呼ばれる、イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニアなど米国北部五大湖周辺の各州にまたがる「錆びついた工業地帯」を著者が実際に訪れて感じ取ったことをもとに分析しています。

 

 

著者の見る「アメリカ分断」の現状は次の通りです。

 

 

◆ 民主党支持の多い東海岸・西海岸とは異なるアメリカ

 

◆ ホワイト・トラッシュ、ヒスパニック社会、ポートランドの若者ホームレス

 

◆ 全米ライフル協会(NRA)支持は独立心を持つ農村部の人々のため

 

◆ トランプ現象の本質は、アメリカにおける百姓一揆

 

◆ レーガンは「統一」だったが、トランプは「分断」

 

◆ キャスティングボードを握るリバタリアン党・ティーパーティーなど第三極勢力

 

◆ トランプを支えるユダヤ系大富豪・コーク兄弟と93歳のキッシンジャー元国務長官

 

 

 

最後に、イギリスが脱退したEUの「分断」と今後について、著者の考察が記されています。そして、フランス、イタリア、スペイン、ドイツで何が起こっているのか分析しています。ポイントは以下の通りです。

 

 

◆ 欧州最大の問題は「難民」と「経済」

 

◆ 東と西に「分断」されたフランスは全土が衰退

 

◆ イタリアは15年後の日本(決められない国・老人支配・ポピュリズム・メディア人気重視など)

 

◆ カタルーニャ独立運動に悩むスペイン

 

◆ EUで独り勝ちのドイツ

 

◆ 2018年に城壁発祥の地EUに「インターネットの壁」が出来る

 

 

 

欧州では、イギリスでの極端な二極化と、難民や経済の問題を抱えて混迷する各国が特徴的です。

 

 

今後最も注目すべき動きは、最後に挙げた、GDPR (= General Data Protection Regulation:欧州一般データ保護規則)という「インターネットの壁」でしょう。

 

 

これは、個人情報を集め処理する業者に対する様々な規制や罰則を課すものです。つまり、Google や Facebook が世界中の個人情報を半ば勝手に収集し、広告主に売り渡すような行為を厳禁とする法律です。

 

 

そういう意味では、中国がシリコンバレーの侵略を防ぎ、独自サービスを定着させて国家のサイバースペースを守ったのは先見の明があったのかも知れません。

 

 

これから欧州が目指す「1995年まで戻す」インターネットの「壁」が世界の潮流になるでしょう。

 

 

世界をつなげたインターネットは、「分断」の時代を迎えようとしています。

 

 

あなたも本書を読んで、グローバリズムが逆転し、分断した世界になろうとしている現状を学んでみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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