書評ブログ

サウガト・ダッタ編『英エコノミスト誌のいまどき経済学』(日本経済新聞出版社)

本書は、英国の経緯ある経済誌 『エコノミスト』 の2008年1月~2010年4月の期間を中心とする記事を集めて、経済学とは何かを考える指針となる見方を収録している。

 

リーマンショックをはじめとする現代の経済危機、景気後退、貧困や開発などの問題に、経済学はどのような解決策を提供しているのか、先端的な研究のエッセンスを交えて、本書は解説している。

 

経済危機で明らかになったマクロ経済学や金融経済学の根本的な欠陥、また経済学者による新たな研究の方向性なども、英 『エコノミスト』誌はじっくりと記事の中で伝えている。

 

本書の構成は以下の7部から構成されている。

 

1.経済学の基本をめぐる議論
2.経済はどのように成長するか
3.マクロ経済のマネジメントー財政政策と金融政策
4.ミクロ経済学ー万物の経済学
5.経済学の失敗
6.進化しつつある分野
7.新進気鋭の経済学者たち

 

上記の1~4までが本書の前半部分で、経済学とはいったい何なのかという、古典的な役割や分析について述べている。また、5~7が後半部分でとして、これからの経済学がどのような方向に向かっているかを考察している。

 

とくに最終の7では、世界の経済学の第一級の権威たちの推薦した50人を超える研究者の中から、『エコノミスト』 誌が選りすぐった、次の10年を担う8人の若手スター経済学者を紹介している。以下の8人だ。

 

1.ジェシー・シャピロ (シカゴ大学)
2.ローランド・フライヤー (ハーバード大学)
3.エスター・デュフロ (MIT)
4.エイミー・フィンケルスタイン (MIT)

 

5.ラジ・チェティ (ハーバード大学)
6.イヴァン・ワーニング (MIT)
7.ザヴィアー・ガバイス (ニューヨーク大学)
8.マーク・メリッツ (プリンストン大学)

 

英 『エコノミスト』 誌は、つねに世界経済の最新動向予測を発信し続けており、数多くの変化を的中させてきた。日本の高度経済成長もそのひとつだ。

 

本書はまさに、経済学の今と未来が見える、ホットな話題をクールに料理した最新の経済学ガイドだ。経営者やグローバルに活躍するビジネスパーソンには必読の書だ。ぜひとも、すぐに一読することを薦めたい。