書評ブログ

高井尚之『カフェと日本人』(講談社現代新書)

高井尚之氏は、1962年名古屋生まれでの経済ジャーナリスト、経営コンサルタントだ。日本実業出版社の編集者、花王の情報制作部・企画ライターを経て、2004年からフリーとなった。

 

企業経営者や幹部の取材を続けていたが、2007年からカフェ取材も始め、専門誌の連載や放送メディアでの解説も行う。『日本カフェ興亡記』 (日本経済新聞社)など、著書は多数ある。

 

本書は、日本初の喫茶店からスターバックスまで、様々な日本のカフェの変遷と、日本人との関わりについて記した、日本のカフェ文化論だ。

 

カフェやコーヒーそのものが好きな私にとっては、待望の書で、著者の取材力や分析・洞察力には感銘を受けた。本書の構成は以下の通りだ。

 

1.スタバが開国した 「女性向けコーヒー」
2.カフェの誕生
3.日本独自の進化を遂げたカフェ・喫茶店
4.なぜ名古屋人は喫茶好きなのか
5.カフェ好きが集まる聖地
6.「うちカフェ」 という見えざる市場
7.それぞれの記憶に残る 「カフェと人生」
8.参考文献

 

日本にコーヒーが伝来したのは1700年前後の元禄時代と言われている。また、日本初の喫茶店は、1888年に東京下谷区黒門町(現在の台東区上野)に開店した 「可否茶館」 らしい。

 

ここは画期的な施設で、コーヒーを飲むだけでなく、店内にはトランプ、クリケット、ビリヤード、碁、将棋などの娯楽品のほか、国内外の新聞・書籍も揃え、化粧室やシャワー室まで備えていた。

 

その後、名曲喫茶、シャンソン喫茶、ジャズ喫茶、歌声喫茶、ゴーゴー喫茶、文壇カフェ、美人喫茶、メイド・カフェなどの特殊喫茶が流行り廃りを繰り返す。純粋にコーヒーを楽しむ純喫茶もその中に生きつ続けた。

 

フルサービスの喫茶店から、現在主流のセルフサービスのカフェへ移行したのは、忙しく働くビジネスマンのニーズを捉えたドトール・コーヒーの展開が大きな転機だ。

 

ドトールの1号店が開店したのが1980年、それから16年遅れてスターバックスが日本上陸を果たしたのが1996年だ。今や、この2つのチェーンが2大勢力で、2014年現在、スターバックス1034店(売上高1256億円)、ドトール1095店(売上高738億円)だ。

 

日本のカフェは、時代とともに、その時の世相や日本人の嗜好、ニーズに合わせて変遷してきている。今後も、ノマド・ワーキングの時代が来て、少子高齢化が進む日本において、大きな変化があるだろう。

 

これからはますます、居心地のいい空間を提供する、スタバ型のカフェや、オープンカフェが伸びていくのではないだろうか。

 

カフェ好きの方は本書は必読、それ以外の方々も、コーヒーの魅力やカフェの良さをぜひ知ってもらいたく、本書を推薦したい。