書評ブログ

辻村祐治『おじさんハワイひとり旅』(光文社文庫)

辻村祐治氏はハワイをこよなく愛した旅人だった。残念ながら、若くして亡くなられ、今後はハワイひとり旅の著書が読めないのが寂しくて仕方ない。この本は辻村氏のデビュー作で、オアフ島4泊6日の旅を描いたものだ。

 

第二弾が、『おじさんハワイ気まま旅』(知恵の森文庫)で、ハワイ島4泊6日ホロホロ歩きの旅。第三弾が、『みんなのハワイ はじめての英語』(光文社ペーパーバックス)、旅の英語を書いた本だ。

 

計三冊の著作を残しているのだが、どれもハワイに対する並々ならぬ情熱に溢れ、旅中はとにかくよく歩き、そして必ずビールを飲むシーンが出てくる。

 

彼は、ハワイという楽園に、「おじさんひとり旅」という個性をぶつけて新境地を開いた。皆うらやましいけど、なかなか実行できないシチュエーション。それを辻村氏が爽やかに成し遂げた。

 

辻村氏の旅はバスと歩きの倹約旅行。とにかく朝から夕暮れ、いや夜までよく歩く。足が棒のように重くなったくだりが何度も登場する。これだけ歩いて、ハワイの景色が見事に描き出される。目の前に見えるようだ。

 

唯一の贅沢が宿のラナイで飲むビール。バド缶が多い。喉にしみるという表現が、こちらの心にしみてくる。歩き回った後のビールは格別に美味しいのだろう。

 

いつかホノルルに住みたいという辻村氏の夢、同じ夢を持っている人は多いだろう。私も同じ想いを持ちながら、心よりご冥福をお祈りしたい。ハワイが大好きになる三冊を、ぜひともお薦めしたい。