書評ブログ

谷口忠大『ビブリオバトル』(文春新書)

谷口忠大氏は、京都大学大学院にて工学博士課程を修了し、現在は立命館大学准教授だ。ビブリオバトルの考案者でもあり、本書はその入門書として最適だ。

 

ビブリオバトルとは、お薦めの一冊を持ち寄って紹介し合い、ゲーム感覚を取り入れた、新しい「書評」の形だ。ルールは極めてシンプルで、次の4つのみだ。

 

1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる
2.順番に一人5分間で本を紹介する
3.それぞれの発表の後に参加者が全員でその発表に関するディスカッションを2~3分行う
4.すべての発表が終了した後に 「度の本が一番読みたくなったか?」 を基準とした投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを 『チャンプ本』 とする

 

ルールがシンプルで公平なため、様々な仲間やコミュニティーでこの方式が広がってきている。もともとは大学の研究室で始まったが、小中学校や高校、大学のみならず、職場や各種サークルなど広がりは大きい。

 

ビブリオバトルの最大の魅力は、「人を通して本を知る、本を通して人を知る」というところにある。本書では、京都大学の研究室で生まれ、今や全国大会も催されるようになったビブリオバトルの誕生秘話から遊び方まで、その全貌を描いた入門的な書だ。

 

本書の冒頭にある、小説風ストーリー仕立てのビブリオバトル実況中継を読めば、まずイメージが掴めて、書評は読むだけのものではなく参加するもの、というビブリオバトルの魅力が伝わるだろう。

 

本書で整理しているビブリオバトルの機能は以下の4点だ。

 

1.参加者で本の内容を共有できる (書籍情報共有機能)
2.スピーチの訓練になる (スピーチ能力向上機能)
3.いい本が見つかる (良書探索機能)
4.お互いの理解が深まる (コミュニティー開発機能)

 

また、ビブリオバトルはフットサルのようなもので、ライバルはドッジボールだという。以下の3点がフットサルと同様だという思いが込められている。

 

1.ルールのあるスポーツ競技と同じ
2.フットサルのように気軽に楽しんで欲しい
3.フットサルのように草の根にひろがる 「普通名詞」 にしていきたい

 

ビブリオバトルは全国に広がりつつあるものの、まだまだ一般には知名度が低く、みんなが気軽に楽しむ競技にはなっていない。ドッジボールのように誰でもルールを知っていて、どこでも行われるようにしていくことが目標だ。

 

ビブリオバトルの設計や背後にある一貫した考え方は、「知識は人に紐付いている」ということで、「書評を媒介としたコミュニケーションの場づくり」というものだ。

 

本が好きで、旺盛な好奇心がある全ての方々に、よりよい仲間やコミュニティーの発展に繋がるビブリオバトルおよび本書の一読を薦めたい。