書評ブログ

米田智彦『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)

米田智彦氏は、青山学院大学卒業後に、研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経てフリーランスの編集者、ディレクターとなる。

 

本書は、「ノマド・トーキョー」 という生活実験を通して米田氏が知り合ったライフデザイナーたち28人の生き方、ライフデザインを紹介している書だ。「ノマド・トーキョー」 とは、家もオフィスも持たず、トランク一つで東京を遊動し、都市の機能をシェアしながら 「旅するように暮らす」 を目的とした生活実験型プロジェクトだ。

 

一般的には、場所に縛られずに働く「ノマドワーキング」が多くの人たちが実践する新しいワークスタイルだが、米田氏はそれを生活全般に拡げる実験をした。

 

本書によれば、バラエティに富んだ働き方や暮らし方を実践する人を「ライフデザイナー」と呼び、彼らはマス・メディアに採り上げられることはないが、現代の日常に静かな革命を起こしている。

 

ライフデザイナーたちの生き方におけるポイントは以下の3点だ。

 

1.セルフデザイン  ; 精神の安定と自己の可能性を広げる 「多面性」 のデザイン (自)
2.ワークデザイン  ; 場と人によって仕事の 「つながり」 を生み出すデザイン (職)
3.リビングデザイン ; 心身の健康を良好に保ち続ける 「多拠点」 の住環境デザイン (住)

 

この「セルフ」「ワーク」「リビング」は三位一体であり、どれが欠けてもバランスが崩れてしまう。本書では、続く各章でこの3つのデザインを順次、紹介している。

 

本書で提唱しているのは、「ライフプラン」 ではなく、「ライフデザイン」だ。従来からある 「逆算の人生設計」 ではなく、「デザイン思考」がベースになっている。

 

デザイン思考とは、イノベーションを達成するための考え方や技法のことで、事前にきちんとした計画を立てて実行する手法ではなく、取り敢えず作ってみてから改良していくような試行錯誤型のアプローチだ。

 

現代は変化の激しい時代で、我々の人生設計も予定調和なプランニングでは上手くいかなくなってきている。計画性の精度を高めてもアクシデンタルな人生は思う通りにはいかない、ということだ。

 

先日、本ブログで紹介した J・D・クランボルツ著『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)におけて述べられていたキャリア開発論とも呼応する考え方だ。

 

本書の後半では、大航海時代のキャリアデザインと、「あいだ」 を行き来するこれからの人生設計について述べられている。転換期に入った現代において、人生の大きな指針になる珠玉の書だ。

 

新たな人生を切り拓いていく高い志をもった全ての人々に本書を贈りたい。