書評ブログ

祖母の青春を描いた戯曲の名作

永井愛さんの祖母・永井志津さんは、105歳で練馬区の長寿番付の横綱になった方です。

 

桐朋学園大学演劇専攻科を卒業して大石静さんと劇団「二兎社」を旗揚げして主宰した永井愛さんは、毎日午前1時頃から執筆活動をしていた時、祖母が大声で語る女子師範学校時代の思い出を聞いていたそうです。

 

何度も静かにせよと怒鳴ってきたのが根負けして、ついに祖母の青春時代を書くことにしたそうで、本日紹介するのはその戯曲本で、この本です。

 

永井愛『見よ、飛行機の高く飛べるを』(而立出版)

 

この本のタイトルは石川啄木の詩「飛行機」の一節を借りたそうですが、同じ時代に啄木の見た飛行機が飛ぶ「かの蒼空」を、明治の少女たちはどんな思いで仰ぎ見たのでしょうか。

 

主な登場人物は以下の通りです。

 

1.光島延ぶ(女子師範学校4年生)
2.杉坂初江(同・2年生)
3.大槻マツ(同・4年生)
4.山森ちか(同・4年生)
5.小暮婦美(同・4年生)

 

6.梅津仰子(同・3年生)
7.石塚セキ(同・3年生)
8.北側 操(同・1年生)
9.新庄洋一郎(国語の先生)
10.安達貞子(英語の先生)

 

11.菅沼くら(裁縫の先生)
12.中村英助(習字の先生)
13.青田作治(体操の先生)
14.難波泰造(校長)
15.板谷わと(寄宿舎の賄い婦)
16.板谷順吉(わとの息子)

 

舞台は丘の中腹にある女子師範学校および寄宿舎の古びた洋館です。永井愛さんの祖母は愛知県立第二師範女子部に学び、優等生で先生に可愛がられ、「国宝」というニックネームまで頂戴していたと言います。

 

一級下に市川房枝さんがおられ、親しくしていたそうです。力強い文章を書くために漢文の勉強をしようと、頼山陽の「日本外史」を毎晩二人で読んだとか。

 

祖母の志津さんの教員生活は卒業後わずか1年で終わってしまい、あとは専業主婦として生きたそうですが、それだけに女子師範学校時代の青春は輝く人生の瞬間だったのでしょう。

 

そうした輝く青春を描いたこの戯曲本は、力強いエネルギーが伝わってくる書です。皆さんもぜひ、本書を手に取って時代を超えた青春のエネルギーを感じていただきたいです。

 

この本は、2015年2月11日(水)に実施した「第2回読書交流会」にて20歳代女性から紹介発表があった「推薦書」です。この読書交流会がなければ決して私が手に取ることはなかった書なので、この本との出会いに感謝しています。

 

では、今日もハッピーな1日を!