書評ブログ

白駒妃登美『こころに残る現代史』(角川書店)

白駒妃登美さんは、一昨日にひすいこたろう氏との共著であるデビュー作『人生に悩んだら「日本史」に聞こう』を紹介した著者で、30年のキャリアを持つ歴女だ。

 

歴史上の人物がまるでそこにいるかのようなリアルな歴史講義が感動を持って支持されていて、白駒さんの講義受講は次々に歴史好きになってしまう、という。

 

本書は、日本人があまり知らない「現代史」に焦点を当てて歴史上の人物の、意外な功績や人柄を伝えている。まず、最初の章では、司馬遼太郎著『坂の上の雲』で取り上げられている日露戦争時代に活躍した日本人について、以下の5名。

 

1.明石元二郎 : 世界を揺さぶったスパイ
2.横川省三 : 民間人の名誉ある銃殺
3.高橋是清 : 戦費調達の大功労者
4.柴五郎 : 日英同盟締結の立役者
5.久松五勇士 : 宮古島の名もなきヒーローたち

 

この時代は日本の本格的な近代化を目指し、すべての国民が「公」に生きた時代だと、著者は言う。その後の高度経済成長で、忘れ去られてしまった高い志を、多くの日本人が2011年3月の東日本大震災で思い起こした。

 

今、日本は大きな転換期にあるのではないか。開国、明治維新や第二次世界大戦の敗戦に匹敵する、日本の歴史の大転換期にあるのだろいう。

 

本書で次章では、以下の5名の「日本人の知らない日本人」を採り上げ、日本人の美意識について紹介している。

 

1.柳川宗成 : インドネシア解放の父
2.佐久間勉 : 沈みゆく船の中で
3.松江豊寿 : 日本初の 「第九」 演奏
4.増田敬太郎 : 神様になった警察官

 

いずれも感動的なストーリーだ。詳しい中身についてはぜひ、本書をお読みいただきたい。次の第3章は、以下の国々と日本について、感謝と謝恩の歴史について紹介している。いずれも涙なくして読めない内容だ。

 

1.日本とベルギー : 心からの贈り物
2.日本とメキシコ : 悲願の平和条約とオリンピック
3.日本とウズベキスタン : 失われぬ誇り
4.日本とトルコ : エルトゥールル号の恩返し

 

こちらも解説を加えるより、本書の記述をぜひ読んでもらいたい。私は知らない事実ばかりだったが、知ることができて、ほんとうによかった。

 

本書の最終章は、東京オリンピックと復興について、以下の4つの物語が掲載されている。2020年の東京オリンピック開催が決まった今、ぜひとも1964年の東京オリンピックについて歴史を知っておくべきだ、と本書を読んで心から感じた。

 

1.古橋廣之進 : フジヤマのトビウオ
2.平沢和重 : 魂のスピーチ
3.アキラ・カトウ : ペルーが泣いている
4.日本と台湾の絆 : 心の交流、奇跡のベストゲーム

 

最後もやっぱり、涙が流れる。感動の秘話を次々に知ることができる本書を、2020年東京オリンピック開催までに読むことを、すべての日本人に薦めたい。