書評ブログ

田村耕太郎『君に世界との戦い方を教えよう』(講談社)

田村耕太郎氏は、1963年生まれ、早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院卒業(MBA取得)。その後、デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学博士)、オックスフォード大学、ハーバード大学、スタンフォード大学、東京大学の様々なプログラムを修了している。

 

とくに、米国エール大学の人脈は凄いようで、本書にもしばしば登場する。まさに「学び」のスペシャリストといった感じだ。私が優れていると考える、殆ど全ての大学で彼は学んでいる。多国籍の多様な学生との議論は財産だろう。

 

田村氏は、2002年から2010年まで参議院議員として、内閣府大臣政務官などを歴任した。著者の主張は熱い。本書で繰り返し訴えているのは、「若者は世界に出よ!」ということだ。

 

日本の若者は内向き志向が強く、優秀な学生であってもなかなか日本の外へ出ようとしない。1990年代以降のバブル崩壊と失われた20数年の影響が大きいのだろう。

 

デフレと長期にわたる不況・経済停滞は、日本の若者の前向きな発想を完全に奪ってしまったかのようだ。同時期に進められた「ゆとり教育」の弊害も大きいだろう。

 

小中学生が詰め込みや競争の中で、懸命に学ばなくてどうするのだ、世界の教育は生き残りのために必死に猛勉強するシステムだ、というのが著者の熱い主張だ。「ゆとり教育」失われた20年の影響については私も同感だ。

 

また著者は、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンクである「ランド研究所」で、日本人初の研究員をつとめた。このランド研究所の人脈もすさまじい。さすがに世界最先端のシンクタンクだ。

 

本書では、米国名門大学での様々な国の学生エリートの優秀さが紹介されている。とくにインド人の理数系能力の高さは有名だ。世界のIT産業でインド人が活躍しているのも、米国名門大学のカリキュラムによるのだろう。

 

中国人留学生も14億人の人口から選ばれたエリートなので、米国の大学では目立つようだ。華僑のネットワークは世界中のチャイナタウンに張り巡らされているし、世界の成長センター中国は世界のビジネス界から注目の的だ。

 

ハーバード大学をはじめとする米国の名門大学には、世界中から入学希望が殺到しており、米国は大学を核とした高等教育では圧倒的だ。米国経済の基盤は教育と人脈の面から盤石となっている。

 

これから世界で活躍する夢を持つ若者と学校や企業で教育を担う全ての方々に本書をお薦めしたい。大いなる刺激を受ける本だ。