書評ブログ

池上彰『学び続ける力』(講談社現代新書)

池上彰氏の著書を推薦するのは本書で2冊目だが、この本は池上氏の仕事の原点が述べられている。NHK記者として取材と勉強を繰り返し、NHK週刊こどもニュースを担当したことが著者の人生を変えた。

 

「すぐに身につくことはすぐに役立たなくなる。」は名言だ。だからこそ、宗教、哲学、文化、古典など、教養と呼ばれる物事の原理・原則を学び続けることが大切なのだ。

 

池上氏のニュース解説や政治・経済など現代の社会問題に関する説明は分かりやすく本質を捉えていて秀逸だ。これは、池上氏の徹底的に学ぶ姿勢、学び続ける習慣がなせるわざだろう。

 

池上氏は現在、東京工業大学のリベラルアーツセンター教授として、一般教養を教える立場にある。理系の国立大学生エリートに、より幅広い教養の重要さを伝え、研究成果を実社会で役立たせる狙いがある。

 

理系の学部教育や大学院教育では、教授からエンジニアとしての武器、すなわち科学的思考法を強調される機会が多い。そうした中で専門性の追求ばかりに偏って現実社会から遊離してしまう危険がある。

 

東工大は変化の激しいグローバルな現代の情報社会において、一般教養や学際的な研究の重要性を強く認識し、大学改革の一環としてリベラルアーツを重視する組織「リベラルアーツセンター」の設立し、新教授の招聘を行った。

 

そうした改革の中で白羽の矢が立ったのが池上彰氏だ。池上氏の講義は大きな反響を呼んで書籍化され、さらにシリーズ化されている。前回紹介したのはその第一冊目だ。

 

国立大学の人気教授であり、テレビ界でも人気キャスターとなった池上氏の仕事の原点とも言える本書を、全ての学生とビジネスマンに推薦したい。