書評ブログ

武内正典『55歳からはお尻を鍛えれば長生きできる』(講談社+アルファ文庫)

武内正典氏は、沖縄県生まれで名古屋大学医学部卒業の医学博士。米国デューク大学整形外科学教室へ留学して帰国後、1991年に沖縄に武内整形外科とトレーニングジム「ヴィヴィッド」を併設させる形で開業。

 

高齢者やスポーツ選手のリハビリや筋トレの指導を行っているが、その効果は高齢社会を迎えた我が国では大きな注目を集めている。

 

本書は、武内氏の医院やトレーニングジムで実践した成功例を、図解を交えながら解説した本で、実に分かりやすい。生活習慣病を予防するための処方箋や食事・運動メニューなどは世に溢れているが、本書の提案はひと味違う。

 

生活習慣病の予防については一般的に、以下の2点が良いとされ、実は私も実践しています。

 

1.炭水化物(とくに主食のごはん)の摂取を腹8分目以下に抑える
2.ウォーキングなどの有酸素運動を毎日行う (目標は1日1万歩)

 

しかし本書では、上の二つは殆ど効果がなく、筋トレが第一だと説いている。ごはんはよく食べて、むしろおかずの量を制限するべきだ、という主張だ。

 

運動についても筋肉が鍛えられないウォーキングでは、体が徐々に省エネ型になっていって、次第に歩数を増やしていかないと同様のカロリー消費の効果が得られなくなってくる、と説く。

 

私は著者の意見に全面的には賛成しかねるが、確かに筋肉をトレーニングによって鍛えていく効果は大きいようだ。理由とそのメカニズムは以下の通りだ。

 

1.高齢者は転倒による大腿骨頸部の骨折が元で寝たきりに移行して死亡するケースが多い
2.従って、倒しないために筋トレによってお尻(臀筋からハムストリングス)の筋肉を鍛えることが重要
3.筋トレを行えば、筋肉が血液を貯めこむために血管中の血液循環量を減らすことができる
4.血管中の血液循環量が減れば血圧が下がり、心臓の負担も軽減するし、睡眠のストレスもなくなる
5.筋トレは以上の好循環を起こすので、高齢者の生活習慣病を改善して長生きに繋がる

 

著者は23年間の併設したジムでの筋トレ治療を実践した経験から、データ分析も行って現在の治療法に確信を持つに至ったようだ。

 

世の中には数多くの健康法や生活習慣病の予防法・治療法があるので、何が絶対に正しいとは言い切れない。自分に合った方法を見つけるヒントとして、本書も活用することをお薦めしたい。