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森田直行『全員で稼ぐ組織 JALを再生させたアメーバ経営の教科書』(日経BP社)

森田直行氏は、稲盛和夫氏が創業した京セラに入社以来「アメーバ経営」を実践してきた。

 

本来、京セラで行ってきた「アメーバ経営」という手法は、門外不出の機密だったが、森田氏が創業者の稲盛氏に進言して、外部へノウハウ提供を行うビジネスを立ち上げた。

 

以来、数多くの中小企業で「アメーバ経営」という経営手法が導入され、素晴らしい成果を挙げている。その代表が経営破たんしたJAL(日本航空)で、導入企業としては最大規模の会社だ。

 

森田氏は、会社更生法の適用により倒産したJALへ、稲盛氏とともに送り込まれ「アメーバ経営」を実践して、わずか2年8か月という短期間で再上場するという輝かしい実績を挙げた。

 

「アメーバ経営」の柱は以下の2つだ。

 

1.部門別(工程別)独立採算制度
2.全員参加経営

 

本書でも「アメーバ」と名付ける、工程別の小集団組織がそれぞれ独立して採算を管理する仕組みが説明されていて、その運用上のポイントも解説されている。

 

また、2番目の柱である「全員参加経営」については、さらに詳しく述べられており、これが「アメーバ経営」という仕組みが上手く機能して成功するかどうかのキー(鍵)になる。

 

本書のタイトル 『全員で稼ぐ組織』 は、まさに全員参加経営の大切さを表わしたい著者の意図を反映したものだろう。

 

社員全員が経営に参加するためには、何よりも人として、人間としての生き方、すなわちフィロソフィーが重要だ、というのが稲盛氏の教えだ。

 

本書とほぼ同時に『京セラ・フィロソフィー』という門外不出の書が出版された。稲盛氏は、JALの再建以降、海外にまで広まる稲盛式経営である「アメーバ経営」を世に広めていこうという意思を強く持っているようだ。

 

本書は、数多くの素晴らしい成果を挙げている「アメーバ経営」を理解するための、最適の書だろう。全ての経営者、経営幹部、ビジネスパーソンに一読を薦めたい。