書評ブログ

杉山由美子『定年後 年金プラス、ひとの役に立つ働き方』(朝日新書)

杉山由美子氏は、早稲田大学第一文学部を卒業後、鎌倉書房「マダム」編集部勤務の後、フリーランスライターになった。教育問題の著書が多く、私立中学受験やそのための進学塾に関するレポートから成る著書は定評がある。

 

とくに、今や中学受験界のトップブランド進学塾に成長したSAPIXの教育法に関する書籍 『SAPIXメソッド』 は注目を集め、大きな反響を呼んだ。

 

杉山氏はその後、シニア社会学会会員として、女性の働き方や社会保障、シニア世代の生き方・働き方に関する分野に執筆の主力を移しているようだ。

 

精力的なインタビュー取材と細かな記述は読者を惹きつけ、具体的なイメージを湧かせてくれる。私は中学受験や進学塾に関する書籍のころから読ませていただいている。

 

本書は、最新刊の書で、定年後の働き方について30名のインタビューに基づく実例の紹介、および現代のトレンドを鋭く描き出している。構成は以下の通りだ。

 

1.租事を創る
2.地域のために
3.介護をになう
4.NGOで働く
5.これまでとちがう仕事をはじめる
6.資格をとって独立
7.再雇用制度ではたらく
8.子供のために
9.ネットを使った仕事開始

 

本書の中の、それぞれの実例レポートを読むと、定年後もさまざまな生き方、働き方があるものだと思う。年金にプラスアルファのお金ももちろん大切だが、それ以上にやりがい、社会から必要とされる実感を大事にしている人が多い。

 

私はとくに、地域のために働く人や、ネットを使った事業を開始する人々に興味と関心を抱いた。また、大のハワイ好きゆえ、ハワイシニアライフ協会の活動にも共感を感じた。

 

定年退職の前後のかたはもちろん、若いビジネスパーソンにもぜひ読んでほしい書だ。本書の一読を心から薦めたい。