書評ブログ

春山茂雄『脳内革命』(サンマーク出版)

本書は、1995年に出版された本だが、当時の年間ベストセラーに成るほどよく売れて大きな反響を呼んだ。まだ出版界に出て間もなかった無名のサンマーク出版も本書の爆発的ヒットにより一躍、有名になった。

 

この年は、1月に阪神淡路大震災が起こり、3月にオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こって、日本経済は不況色が強まり、日本中が大きな閉塞感に包まれていた。

 

そうした中で、本書の主張は、プラス発想こそが脳内に β エンドルフィンという良いホルモンが出て、心身ともに健康にする、という主張で、暗く沈む多くの人々を勇気づけた。

 

春山氏は自身でクリニックを経営し、その臨床データも紹介しながら、ノルアドレナリンという悪いホルモンの働きを抑える意味で、 β エンドルフィンの効用を説いた。明るく、前向きに、楽観的に生きよ、ということだ。

 

「病は気から」と昔から言われる言い伝えのように、「くよくよするな」という主張に近い。それを、脳内ホルモンのバランスという医学的見地から説明したことが、分かりやすいと評判になった。

 

本書では、運動と健康との関係や、食生活と健康との関係についても章を立てて述べられている。また、脳の限りない可能性についても言及される。

 

ストレスは、がんを初めとする様々な疾病の原因とされ、それをノルアドレナリンという悪いホルモンの働きとすれば、まさに β エンドルフィンという良いホルモンがそれを抑えて健康に導く、という説明は説得力がある。

 

本書や春山氏の主張が、暗くて先の見えない日本国民に、ひと筋の希望を与えたという意味で、大きな支持を受けたのだろう。

 

医師による多くの一般向け健康関連書籍が今は出版されているが、本書はその先駆けとなった書物だ。また、近年の脳ブームの火付け役となった書でもある。

 

健康や生き方を模索する、悩める多くのビジネスパーソンに、改めてシンプルな主張で、元気を与えてくれる本書の一読を薦めたい。