書評ブログ

日能研進学教室『中高一貫校』(ちくま新書)

日能研は、中学受験のトップ進学塾として一世を風靡した存在だ。文部科学省が推進した「ゆとり教育」を真っ向から批判し、学力を伸ばすには中高一貫校しかないというキャンペーンを展開した。

 

日能研は、もともと神奈川県を地盤とする本部系と、関東系の2系列があって、2つの進学塾が合併してできた経緯がある。「四角いあたまを丸くする」という広告で、一気に生徒数を拡大した。

 

日曜テスト中心の予習型学習や、地元密着・学習塾との提携というシステムで、中学受験界を支配していた 四谷大塚を、直営教室型の日能研が生徒数や有名中学への合格実績で猛烈に追い上げた。

 

一時は日能研の一人勝ち状態が続いた中学受験・進学塾業界だが、関東系の小島副学長が辞任した頃から、新興勢力のSAPIXにトップの座を明け渡すようになった。

 

日能研凋落のきっかけとなったのは、上位特待生の授業料無料化システムを辞めたことだと言われている。無料化で優秀な生徒の引き抜きに力を入れていたSAPIXが有名中学の合格実績でトップに立つ。

 

栄枯盛衰が激しい進学塾業界だが、日能研進学教室が中学受験ブームを広め、中高一貫校の存在を世に知らしめた功績は大きいだろう。本書は、その主張が端的に述べられている書だ。

 

時代は古くなったが、中学受験に取り組む家庭だけでなく、進学塾業界や中学・高校の関係者にも一読を薦めたい。