書評ブログ

新しい「経済学の教科書」について

かつて経済学の教科書と言えば、マルクスの 『資本論』 か、ケインズの 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 と相場が決まっていた。

 

あるいは、少し新しい時代の学生はサムエルソンの 『経済学』 を教科書として読んだ。しかし今は、こうした古典も大学生に読まれてはいるものの、圧倒的に人気なのは『マンキュー経済学』という教科書だ。

ということで、本日紹介するのはこちらです。

 

N.グレゴリー・マンキュー 『マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第3版)』 (東洋経済新報社)

 

この教科書はⅠの 「ミクロ編」 とⅡの 「マクロ編」 から成っていて、その前段レベルとして、「入門経済学」 があります。上記の本は 「ミクロ編」 で、以下の7部構成となっています。

 

1.イントロダクション
2.市場はどのように機能するか
3.市場と厚生
4.公共部門の経済学
5.企業行動と産業組織
6.労働市場の経済学
7.より進んだ話題

 

堅い他の経済学書と同じような構成のタイトルが並んで、頭が痛くなってきた人も多いと思います。教科書なので、経済学の基本概念は共通なのですが、この本は読み易いです。

 

それは冒頭の第1部と最終の第7部に表れています。例えば冒頭では、「経済学の十大原理」 として、経済学で使う基本概念を最初に説明してしまいます。以下の 「十大原理」 です。

 

1.人々はトレードオフに直面している
2.あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
3.合理的な人々は限界原理に基づいて考える
4.人々はさまざまなインセンティブに反応する
5.交易(取引)はすべての人々をより豊かにする

6.通常、市場は経済活動を組織する良策である
7.政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
8.一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
9.政府が紙幣を印刷し過ぎると、物価が上昇する
10.社会は、インフレと失業の短期的トオレードオフに直面している

 

人々がどのように意思決定を行い、どのように影響し合い、その結果、経済は全体としてどのように動いているのか、という経済学の研究目的を探究していくうえで欠かせない概念です。

 

マンキューさんによれば、「経済学とは、社会がその希少な資源をいかに管理するのかを研究する学問」 ということです。

 

つまり、「人々はどのように意思決定するか」、すなわち 「どれだけ働き、何を買い、どれだけ貯蓄し、その貯蓄をどのように投資するのか」 を研究するということです。

 

もともと「経済(Economy)」という言葉は、「家計を管理する者」という意味のギリシャ語 Okinomos に由来している。家計と経済には多くの共通点があることから、こうなったのでしょう。

 

また、この本の最終第7部には、今後の経済学の方向性として、「ミクロ経済学のフロンティア」を採り上げています。具体的には次のようなテーマです。

 

1.情報の非対称性
2.政治経済学
3.行動経済学

 

この後に、著者のマンキューさんの結論が述べられていますが、人間の行動は複雑であり、経済学のこれら新しい領域はまだ発展途上としています。

 

私は個人的には、上記の3にあたる経済学と心理学の関係に強い興味を持っています。人間の行動は必ずしも合理的ではないし、不合理だけれども何らかの法則や原理は見いだせるのでは、という考え方です。

 

今日は難しいお話になりましたが、ビジネスを進めていくにしろ、家計を管理運営していくにしろ、経済学の原理は避けて通れないもの、と私は考えています。

 

では、今日もハッピーな1日を!