書評ブログ

小林哲夫『ニッポンの大学』(講談社現代新書)

小林哲夫氏は、1960年生まれの教育ジャーナリストであり、フリーの編集者だ。1994年から「大学ランキング」(朝日新聞社)に編集者としてかかわっている。

 

本書の出版は2007年とやや古く、その直後にリーマン・ショックがあったために世界中の雇用環境も一変しているが、その説くところは世の中の変化を先取りしていたようだ。

 

様々な角度から、日本の少子高齢化による大学経営の厳しさを予言し、激変する大学の流れを見事に見通した書となっている。

 

まず、世界の大学ランキングとして名高い、イギリスの『タイムズ』『ニューズウィーク』、上海交通大学によるランキングについて、その基準の曖昧さやランキングのもとになる数値の調査方法について疑問を投げかける。

 

そこで、著者はニッポンの大学をさまざまな切り口でランキングにして、大学の特徴を明らかにしている。興味深い視点を以下に記したい。

 

1.入試倍率と偏差値
2.学生の増加数
3.留学生数
4.退学と授業出席率
5.インターンシップ、サークル、ボランティア
6.喫煙と飲酒
7.各種コンテスト

 
8.女子学生数
9.就職率、求人数、
10.資格試験合格者数
11.大学教員
12.論文の引用度
13.教育・研究資金の獲得

 

大学の特徴やランキングは、多面的な視点から比較することで真の姿が浮かび上がってくる。大学の選択で迷っている受験生をはじめ、大学卒の採用を実施する企業の人事担当者の方々にはぜひ一読を薦めたい。