書評ブログ

大塚英樹『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』(講談社プラスアルファ新書)

大塚英樹氏は、TVディレクターを経て1983年よりフリーライターとして活躍。ダイエー中内功、NEC関本忠弘をはじめ、500人以上の経営者にインタビューを続けた。

 

数多くのスクープ記事を新聞。雑誌等に掲載していて、時代の変化を読むことに優れたジャーナリストだ。本書は、そうした著者の経験を活かし、会社の盛衰はトップを補佐する No.2 の出来によって決まることを説いたものだ。

 

会社というのは、改善・改革をしなければ「機能不全病」にかかり、必ず潰れるものだ。「機能不全病」とは、トップは会社が永遠に続くものと考え、社員は会社が絶対に潰れないことを前提に組織や職務にぶら下がる状態をいう。

 

換言すれば、それはトップの「裸の王様病」であり、社員の 「ぶら下がり病」 あるいは「寄らば大樹の陰病」ということだ。経営破綻する会社は必ず、「機能不全病」にかかっている。

 

企業が生き延びていくには、その体質を目まぐるしく変わる社会の変化に対応できるものへと変えていくことだ。そして会社を変えるのは社員ひとりひとりである。

 

大事なのは、社員のモチベーションが高まるような企業風土を作ることだ。トップの参謀であり、トップと社員をつなぐ No.2 こそが、社員を鼓舞し、モチベーションを挙げるための「舞台づくり」を行う存在だ。

 

ダイエー、そごう、西武グループ、シャープ、NEC,日本ハムなどがNo.2 を持たなかったために会社を変えられなかったのに対し、ホンダ、ANA、日産、東急グループ、アサヒビールなどはNo.2 の活躍で業績を伸ばし、あるいは再建を果たした。

 

No.2 の役割は、トップと社員の間に位置してトップの参謀的機能を持つと同時に、社員の自発性を引き出し、モチベーションを高め、自由闊達な企業風土に変えていく世話役機能も持つ。

 

変化する社会に企業が対応していく上で、こうしたNo.2 を育てることが、会社存続にとって極めて重要な意味を持ってくる。

 

本書は、大企業から中堅・中小企業にいたるすべての経営者、および経営参謀の方々にぜひ読んでほしい一冊だ。多くの事例研究をバックボーンとする名著として、心から推薦したい。