書評ブログ

ちきりん『未来の働き方を考えよう』(文藝春秋)

ちきりんさんは関西出身の「おちゃらけ社会派」(ブログのプロフィールより)。バブル期に証券会社に勤務した後、米国での大学院留学を経て外資系企業に勤務という経歴だ。

 

2010年に退職してからは、「楽しいことだけして暮らす、人生ふたつめの働き方を実践中。」 (本書の著書紹介より) とのことだ。2つの有名ブログを中心に執筆活動や対談などで、主に「働き方 の提案をしている。

 

私も、ビジネスパーソンとしての働き方、成功のコツを発信している立場なので、多くの示唆を得ている。とくに本書は、ちきりんさんの主張の中でもど真ん中ストレートとなる内容なので、外せない。

 

人生の寿命は皆、それぞれなのだから、人生設計や老後の資金を貯めるという考え方はナンセンス。60歳で死ぬ人は老後資金で困ることはないし、120歳まで生きても経済的な不安が全く無いほどの貯金を用意することなどできない

 

だけど、資金不安のない60歳寿命の人より、自己資金だけで暮らすのは難しい120歳寿命の人の方が幸せなのではないか。この潔さ、と言うか、切れ味の鋭さに共感する。女性ならではなのか、女性らしからぬなのかは意見が分かれるだろうが、心地よい考え方であることは間違いない。

 

本書の中で、珠玉の一節を挙げるなら、「人生の有限感」のくだりだろう。起業家には、スティーブ・ジョブズだけでなく、「人生は有限だ」という感覚を強く持っている人がたくさんいる。堀江貴文、孫正義、・・・。

 

楽天の三木谷浩史もハーバード大学でMBAを取って帰国するなり、「人生は有限でこんなことをしてる場合じゃない」と言って、興銀を退職して起業した。本当の不安とは、人生が終わるという瞬間が、明日にもやってくるかも知れない、ということだ。

 

それに比べれば、その他の不安など質的に全く及ばない。だから死の意識人生の有限感を持つ人はそれ以外の細かい不安に怯えない。最も大事なのは何なのかが分かってくるからだ。

 

常に「人生はあと10年」という前提をおいて、キャリア設計や働き方のコントロールをしよう。10年後に人生が終わっても、後悔しない、ほんとうに楽しい人生だった、やりたいことはすべてできたと思える生き方をしよう。

 

著者からの熱いメッセージだ。ネスレ日本代表の高岡浩三氏も全く同じことを言っているが、それは明日、改めて紹介しよう。働き方に悩む若者に、ぜひ本書を薦めたい。