書評ブログ

ちきりん『「Chikirin の日記」の育て方』(ちきりんブックス)

ちきりんさんは、関西出身で、バブル最盛期に証券会社に勤務し、その後米国大学院留学を経て、外資系企業に勤務した。2010年に早期リタイアしてフリーとして、楽しいことだけして暮らす生活を実践中だ。

 

本書は、2005年5月に始まった社会派ブログ 「Chikirin の日記」 の運営記だ。世間によくあるブログで成功するためのノウハウ本ではなく、無名の会社員が 「ちきりん」 というペンネームで発信してきたブログをいかに運営して育ててきたか、という舞台裏を初めて公開した書だ。

 

本書は、ブログの書き方やアクセスの集め方を記したノウハウ本ではない。著者がブログを書いてきた経緯や、ポリシーを記録として記したものだ。

 

そういう意味では、ブログで情報発信をしようとしている人にとって、即効性のある内容ではないが、自分に置き換えて考えた時に参考になる事実が数多くある。ちきりんさんはブログを 「個人メディア」 として育てようとしているのだ。

 

1年以上、ブログでビジネス書の書評を書いて本を紹介してきた私にとっては、とても参考になった。「Chikirin の日記」 も書き始めてから3年経った2008年からブレイクして急にアクセスが集まったということだ。

 

きっかけは、格差問題での発言で、弱者切り捨てと受け取られ、批判コメントが殺到するなど、いわゆるネット炎上が繰り返されたことだ。若いブロガーのイケダハヤト氏も批判炎上からアクセスが急増した。

 

やはり、ネットでは無難な発言では目立たず、もともと皆、同じ意見の人間ばかりではないのだから、大きな共感と大きな反感を同時に産む極端な意見を、分かりやすく、過激に発言する方がアクセスを集めるようだ。

 

ちきりんさんのブログ運営のポリシーで、私の印象に残ったことを以下に記そう。

 

1.ブログは、「日記」 としているが、事実の羅列ではなく、自分の意見や考え方を書く
2.記事1本について伝えたいメッセージは1つにする
3.ブログをオリジナルの発信メディアに育てる
4.アクセス数だけを集めるブログではなく、見に来てほしい人たちだけを多く集めるブログにする
5.紙の本を4冊、電子書籍を本書1冊、書いてきたが、ブログに来てほしい人を集める手段として本を執筆する

 

6.「そんじゃ~ね。」 で、文章を締めくくるのを、ブランディングとして活用している
7.本名、詳しい経歴や顔写真を公開するメリットがないので、「ちきりん」 として活動する
8.「はてなブログ」 で書いてきたのは日付が明確になる仕組みだったから
9.「はてなブックマーク」 が注目された時期にアクセスが集まった偶然でブログが成長した
10.ネットの中の人にはならず、リアルの活動を中心にしている多数の新規読者に向けて情報発信をしていく

 

本書は、ブログと同じように読みやすく、紙の本と同じようにテーマを一般社会に合わせて書いている。ネットで情報を取り始めたが、まだ新聞、雑誌、書籍での情報収集がメインのリアル社会に軸足のある読者に、ぜひ本書を推薦したい。

 

また、個人で情報発信をしていく志のある方々には、本書は必読の書として薦めたい。